「ナッツリターン」に透ける、韓国財閥の宿痾 後継者の傲慢さが"財閥否定"を増長
大韓航空は日本でもよく知られた航空会社でもあり、今回の事件は日本でも大きな話題になった。ただ、韓国では日本とは違った視点で問題にされている。
それは、韓国で根強い財閥企業のあり方、という側面だ。今回の趙顕娥氏の行動は傲慢、横柄さばかりが目に付く。そんな趙氏の行動こそ、「財閥の傲慢さ」に直結しているととらえられている。
韓国経済における財閥の存在はとてつもなく重い。よくも悪くも韓国経済を牽引する存在だ。韓国を代表するサムスン電子の株式時価総額が、韓国証券取引所全体の時価総額の2割から3割を占めるという一例だけをとってみても、それはよくわかる。また、入社希望ランキングでも財閥グループが上位を占めるなど、国民も財閥なしでは経済が回らないことをよくわかっている。
だが、そんな財閥にとって、後継者問題は実に大きな悩みでもある。大韓航空のように、韓国の主たる財閥企業は3代目の時代を迎えている。彼らが優れた経営者であればよいが、そうでない場合、その扱いが頭痛の種なのだ。
後継者問題が深刻な韓国財閥
大韓航空でも、趙顕娥氏には弟の趙源泰(チョ・ウォンテ)氏(大韓航空専務)、妹の顯旼(チョ・ヒョンミン)氏(同)がいるが、彼らも一時、醜聞を起こしたことがある。源泰氏は2005年、自動車を運転中に70代のおばあさんに暴言どころか暴力まで振るい、検挙されたことがある。また、市民団体に向かって聞くに堪えない暴言を吐いたこともある。
顯旼氏も、大韓航空子会社でLCC(格安航空会社)のジンエアー乗務員が着用する制服に関して旅行業関係者がツイッターに書き込んだ内容にかみつき、「それは名誉毀損だ」とネット上で発言したことがある。その内容は、「ジンエアーのカジュアルな制服の丈が少し短く、荷物を上の棚に上げるときに乗務員のお腹が見えるのが気になる」といったものだったが、それをもって「名誉毀損うんぬんという言い出すのはやり過ぎ」との批判を受けた。
趙顕娥氏の今回の行動について、実際に降機させられた責任者が韓国メディアのインタビューに応じ、「趙氏が責任者と女性乗務員をひざまずかせ、侮辱する言葉を浴びせたうえ、マニュアルの入ったケースの角で何回も責任者の手をたたき、傷が残った」と主張した。さらに趙氏は機長室の入り口まで責任者を押しやり、「すぐに飛行機を止めなさい。出発できないようにしてやる」とすごんだという。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら