ゼンショーついに米国牛輸入再開、「吉野家」崩しへ最終戦争
米国産牛肉を7年ぶりに輸入再開へ。外食最大手のゼンショーがついに空白期間を破り、12月からグループ店で使用する方針を決めた。当面は「牛庵」や「宝島」など焼き肉チェーン数十店に限定する予定だが、牛丼売上高首位「すき家」での使用開始も時間の問題だ。
米国産牛肉は、2003年12月に米国でBSE(牛海綿状脳症)が発生したことで輸入がストップしたが、日本政府は06年に条件付きで輸入を解禁。これを受け、牛丼業界で激しくシェア争いする「吉野家」(吉野家ホールディングス)と「松屋」(松屋フーズ)の2社が輸入再開。一方、ゼンショーは「安全な状況ができたとはいえない」(首脳)と、かたくなに輸入再開を拒否。大手3社で判断が分かれていた。なぜ、ここに来てゼンショーは方針転換を決めたのか。
値下げ一巡後に備え
ゼンショーが現在使用している牛肉は、BSE非発生国である豪州産が中心だ。米国産より3割程度も安いメリットを享受し、値下げを主導。米国産にこだわり価格競争力で劣っている吉野家を尻目に、顧客を一気に拡大している。
吉野家の既存店の売上高が1割減の一方、すき家では2ケタ増をキープするなど対照的だ。すき家のシェアは4割強と断トツ首位で、勢いはすさまじい。
それでも値下げ効果はいずれ一巡する。10年間で3倍の2909億円(09年度)に拡大した牛丼市場だが、「出店余地は今後3年程度で乏しくなる」(大手幹部)とされ、成長鈍化も否めない。市場のパイ拡大が一服すれば、他社からの顧客奪取が一段と必要となるうえ、その後のリピーター需要がカギを握る。
吉野家の最後の砦であるコアなファンの取り崩し--。ゼンショーの次の狙いもまさにそこにありそうだ。牧草飼育中心の豪州産に比べ、米国産は穀物飼育が中心のため、脂が乗っている。牛丼のうま味を引き出すのに最適とされ、米国産を求める吉野家ファンが他社に“浮気”しないのもそのためだ。吉野家も輸入停止の際には牛丼を販売停止したほど、米国産に強いこだわりを見せてきた。