蓑手章吾、増える「特別な支援」が必要な子どもに対する教育の違和感 インクルーシブ教育の実現に通常級改革も必須

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それから数日経ち、教育委員会から辞令を預かってきた校長が、落ち着かない様子で私を校長室に招き入れました。「いやー、びっくりしちゃったよー。どこだと思う?」と聞かれ、「え!? わかりません……」と答えると「済美養護学校だって!」と。

私の頭の中は???でした。というのも、私が就職した時点ですでに「養護学校」という名称は使われていなかったので、「養護……保健室の先生?」というほどに困惑していました。詳しく聞くと、学校種の名称は「特別支援学校」となったものの、変更の煩雑さから当面は「養護学校」という名称でよいことになっているということを知りました。

特別支援学校。まったくもって予想だにしていなかった異動です。特別支援学級ならともかく、特別支援学校です。というのも、小中学校の教員は基本的には「市区町村立学校の教員」なんですね。特別支援学校は都道府県立。高校の先生でもない限りは、特別な事情を除いて異動するはずのない学校なのです。

訳がわからず困惑している私に、校長が教えてくれました。「東京には、市区町村立の特別支援学校が2校だけあるのよ。その1つが、杉並区立済美養護学校」。初耳でした。後で調べてみたのですが、確率にして1000人に1人。宝くじで1万円が当たるくらいの低さです。そして今思えば、この宝くじが私の運命を変えたのかもしれません。

マジョリティーが「普通」、マイノリティーが「特別」という幻想

「同じ学校の先生なんだから、何とかなるだろう」くらいに考えていた私の根拠なき自信が打ち砕かれるのに、何日も必要ありませんでした。

そこで展開されていた学びはむしろ「就学前の学び」に近く、私はそれまで「就学後の学び」しか知らなかったということを思い知らされました。そんな反省から、乳幼児心理学について学び直すとともに、大学に通って特別支援学校教諭免許状を取得し、さらに大学院で人間発達について理解を深めました。

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