露と消えた横浜ベイスターズ買収、住生活グループの次の一手--潮田洋一郎会長

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 横浜スタジアムを使い続ければ、年間約8億円といわれる高額の使用料に加え、看板広告や物販の収入は球場側にしか入らない。セ・リーグ最少の3万人の収容人数など物理的な制約も障害になったとみられる。

が、潮田氏の誤算は、一般の事業会社のM&Aとは勝手が違ったことだった。

「一般的な事業会社同士の話し合いなら、経営を改善する方法はいくらでもある。ところが、今回はそういったもろもろの決定をするのに、オーナー会議とか越えなければならないハードルがいろいろあった。神奈川県や横浜市の財政の問題やいろんな方々の仕事も含めて、相当なしがらみがあると推察される。

通常の買収でもステークホルダーはたくさんいるが、買収後の統合は経済合理性で説明できる。しかし、今回のケースは業績を上げるためというロジックがそう簡単に通用しなかった。それぞれが野球を通して期待していることがいろいろある。一般の事業会社ほど明確な物差しが共有できない世界だな、という感じがした」

住生活グループは、2001年にアルミサッシ最大手のトステムと、水回り設備大手のINAXが統合し発足。その後もサッシの新日軽やキッチンのサンウエーブ工業を傘下に収めるなど、M&Aで成長を遂げてきた。

自分が買った会社を思いどおりにコントロールするのは、ビジネスの世界では当たり前。だが、米シカゴ大学のMBA(経営学修士号)ホルダーで合理的な経営を重視する潮田氏にとって、“外野”の多さは煩わしかったに違いない。

一部では、潮田会長とその実父であるトステム創業者、健次郎氏との確執もささやかれた。健次郎氏が立ち上げた住生活グループの定款には「住生活以外の事業は行わない」という趣旨の一文が盛り込まれている。今回の球団買収がこの禁忌に触れたというのだ。

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