20万円から3500円に活動費減!「PTA広報誌」廃止のメリットがすごい 組織刷新、ICT化を進める鴻巣中央小学校の場合
そんな矢先、鴻巣市教育委員会によって市内の小中学校に、ホームページを無償で構築できるシステム「edumap(エデュマップ※)」が導入された。「これを利用すれば、タイムリーな情報発信ができる」と思った清水氏は、20年度にPTA広報部にブログでの発信を提案。試験的に行事などの写真をブログにアップしていった。
※ 一般社団法人教育のための科学研究所とNTTデータ、さくらインターネットによる、学校情報のオープンデータ化支援プロジェクト。学校ウェブサイトを原則無償で構築・提供している
この試みがうまくいき、21年度から広報部の主な活動は、ブログに完全移行したというわけだ。本格稼働に当たり、edumapの広報部用アカウントを有償で取得することになったが、年間1000円程度なので問題なく移行できたという。
昨今、「広報誌は費用対効果が見合わない」と考える保護者は少なくないが、廃止案が出てもさまざまな配慮から実現できない学校もある。しかし、「広報誌を回覧でご覧になっていた地域の高齢の方から寂しいといった声はあったようですが、どこからも大きな反対はありませんでした」と、清水氏。改革を阻む懸念の多くは、取り越し苦労なのかもしれない。
広報誌を定期発行していた19年度の広報部の予算は21万円だったが、試験運用を経た21年度は思い切って2万円へと削減。しかし、困ることはなかった。広報部部長の小林祐子氏は「結局そんなにお金を使いませんでした」と明かす。

(写真:鴻巣市立鴻巣中央小学校提供)
費用がかかったのは、中央タイムズ「卒業記念号」だけだ。これも「学校で印刷したので、上質紙を使っても1647円で済みました。活動記録を残すために買った880円のUSBとedumapのアカウント代を合わせても、今年度の活動費は3500円程度です」と、広報部部員の石井絢子氏は説明する。
19年度までは年間約20万円の活動費が生じていたが、当時と比べると約98%もカットできた。広報誌廃止のコスト削減効果は大きい。
コスト面以外にも、多くのメリットがあるブログ
ブログに掲載する写真は、広報部が撮影し、清水氏が最終確認をする。清水氏は「児童の顔写真の掲載可否リスト」に従って写真をチェックする作業は増えたが、「掲載NGの児童はそれほどいませんし、確認も自分の行いたい場所と時間にできるので紙よりも楽です」と話す。また、行事から何げない日常まで、さまざまな子どもの姿をタイムリーに掲載できるのもブログのメリットだという。
小林氏も、「かしこまった言葉ではなく、保護者の本音をママ友同士で話すような感覚で伝えられます。迅速に掲載できるのもブログの利点」と語る。
例えば、広報部部員の神谷美和氏は、役員に選ばれた保護者の不安を和らげたいと思い、「大丈夫!」と伝えるメッセージをこの2月に投稿したが、投稿を思いついてから学校の承認を経て3日でアップできたという。