ITの天才、小・中・高校生から育成する「未踏ジュニア」の凄み 日本は才能を「発掘し育てる」プログラムがない

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「当初、応募者は中学生と高校生が半数ずつくらいでしたが、徐々に高校生の応募が増え、今は8割を占めることもあります。未踏ジュニアを卒業して総合型選抜で大学を受験する人に対しては推薦状を書くこともありますが、未踏ジュニアの活動で推薦枠を設けている大学があることなどが広く知られるようになってきた影響もあると思われます。ただ私たちとしては、年齢にこだわりはなく、小学生が応募してきて採択されたこともあります」

メンターごとに異なる採択基準

未踏ジュニアは、小・中・高校生のクリエーターを育成するのが目的であることから、すでに応募者の大半がプログラミングのスキルを身に付けているという。しかし、プログラミングができることは応募の条件にはなく、プログラミングのスキルを身に付けていない応募者が採択されたケースも過去にはある。

鵜飼氏は、「テクノロジーを使って何かを開発したいという提案で応募するのですから、基本的にはプログラミングスキルが必要」としつつも、採択のタイミングでは、プログラミングができなくても構わない場合もあると考える。

「小・中学校でプログラミングが必修になったこともあり、プログラミングの基礎を教えられる人、プログラミングができる人は増えました。しかし、それを使って面白いものをつくり出すスキルはなかなか教えられないし、教えられる人も少ない。プログラミングスキルと、人々が必要なもの、新しい価値のあるものをつくり出すスキルは別物なんです。だから今は、もう次の段階、プログラミングスキルを使って面白いものをつくることのできる人を育てるべきだと考えたことも、未踏ジュニアの取り組みを始めた動機の1つです」

クリエーターの育成期間中に行われる合宿の様子(2018年)。現在はコロナ禍のためオンラインで開催されている(写真:未踏ジュニア提供)

ではメンターは、応募者や開発内容のどんなところを見て採択しているのか。最も気になるところだが、あまり明確な基準はないようだ。12人いるメンターが、それぞれ面接を行って「この人を応援したい」と思った応募者を採択する仕組みにしている。全員がいいと思ったものはよくない、というのはよくあることで、各メンターがいいと思った、とがった人を採択すべきという考えがそこにはある。

「私自身もメンターで、カッティングエッジ(最先端)なテクノロジーを使って何かをつくっている人を応援したいと考えていますが、『今までにない面白いものを実装するプロジェクト』や『まずは自分の周りにいる3人を面白がらせ、楽しませるような提案』というように、採択する際に重視する点はメンターによって異なります」

そもそもメンター全員がボランティアで、各自が仕事などを持っている。基本的には1人のメンターが1件だけ採択するのが基本だが、クオリティーが上がっているため『この人を落とすのはもったいない』と悩むことが多くなっているという。そこで最近は、1人のメンターが複数の応募者を採択することも珍しくなくなっている。

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