本物のエリート育成、N高に続き「N中等部」の狙い 角川ドワンゴ川上量生「脱偏差値」で受験と一線

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コロナ禍を機にオンライン上での学びが身近になり、ますます注目が集まるN高。2021年には新たにS高が開設され、N高とS高の生徒数は2万人を超えた。今や難関大学や海外大学の合格者数が多数出るなど進学実績も好調だが、同校が目指すのは受験勉強のための教育ではない。19年に開設した中等部も含めて、目指すのは生徒の自主性を伸ばす多様な学びだ。通信制中学校の開設が難しい現在の日本で、あえてN中等部開設に踏み切った理由と中高6年間のユニークな学びについて、角川ドワンゴ学園理事の川上量生氏に話を聞いた。

N高の説明会に小学生の保護者が参加した理由

2016年4月にネットの高校として開校して以来、注目を集めている角川ドワンゴ学園のN高等学校。開校時に1482名だった生徒数は順調に増え続け、21年4月には姉妹校となるS高等学校も開校した。

現在、N高とS高 (以下、N/S高)に在籍する生徒数を合わせると2万603名(21年9月30日時点)。開校から5年で、ここまで生徒を集めたとなれば、これまでの通信制に対するネガティブなイメージの払拭に成功したといっていいだろう。

学びの特徴は、何よりネットならではの斬新さにある。N/S高には、自分が好きなときにオンラインで学ぶネットコースだけでなく、仲間と共にネット上で学ぶオンライン通学コースや、各地にあるキャンパスに通う通学コース、通学プログラミングコースの4つがあり、目標や生活スタイルに合わせて選べるようになっている(全コースに年5日程度行われる対面形式のスクーリングがある)。

オンライン上での学びが特徴だが、対面で仲間と共に学ぶ授業もある。ライブ配信授業(左上)、沖縄で行われたスクーリング(左下)、社会に出て活躍するための知識やスキルを身に付ける課題解決型学習プログラム「プロジェクトN」(右上・右下)。いずれもN高

そんなN/S高に中等部があるのはご存じだろうか。いわゆる一条校(学校教育法第一条に基づく学校)ではないが、S高より早い19年4月に開校している。その理由について角川ドワンゴ学園理事の川上量生氏はこう話す。

「いちばん大きな理由は、要望が多かったためです。N高の説明会には、小学生のお子さんを持つ親御さんが相当数参加していました。不登校のお子さんについて悩み、『N高なら行けるかもしれない』と、わらをもつかむ思いだったんでしょう。しかし、まだ小学生なのでN高には入れません。僕らも、日本では通信制中学校は認められておらず、経営面でも難しいのでつくれないだろうと思っていました」

経営としても、リソースを高校に集中させたほうが、効率がいい。また、中学時代にネットだけで学ぶことが、その子の人生にとって本当にプラスになるのか。「ネットの中で生きているような僕らでも確信が持てなかった」と川上氏は話す。

それでもN中等部を開設したのは、中学校をつくらないと救われない生徒が相当数いると考えたからだ。だが当初は、通学コースという形でN中等部をスタートさせた。

小学校から高校以上まで自分の学力に合わせて学べる

N中等部でも、N/S高と同じく「探究学習」「学力向上」「プログラミング」の3つの教育方針の下、総合力を養うという学習モデルを踏襲している。

ただ、N中等部は「一条校」ではないため、フリースクールと同様の扱いとなり、生徒は自身が在籍する中学校に籍を置きながらダブルスクールという形でN中等部に通うことになる。

「不登校の子の中には成績がいい子もいますが、学力が低く、分数がわからないという子もいます。N中等部では、それぞれ自分に合った範囲を勉強しますので、小学校の勉強から始めている生徒もいれば、高校の範囲に進んでいる生徒もいます。全員の成績が伸びているわけではありませんが、自分の学年の学習範囲に追いついた、または追い越したという生徒がかなり増えています。通学コースを1年間やってみて、『この内容ならネットでやっても生徒はついてこられる』と手応えを感じ、20年4月にネットコースを開設しました」

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