過去の天才音楽家たちが「貧乏だった」納得の理由 日本人第一人者が語る現代音楽の魅力と奥深さ

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──コロナ禍はどうでしたか?

あえてリモート演奏ならではの作品を書こうと思いたち、幸運なことに僕は忙しくしていました。自由に無料ダウンロードできるよう僕のサイトに載せています。

イギリス以外のヨーロッパや日本から作曲依頼もたくさんあった。ドイツでは芸術音楽への助成金がドーンと出たらしく、「観客なしで発表する作品を今すぐ書けますか?」と緊急依頼が来た。中止になったベートーベンの第九の演奏会を、小規模な僕の作品に入れ替えたって話もスペインでありました。

次は、オペラで葛飾北斎を書きたいと思っています。今はどのオペラハウスも財政的に厳しいけど、依頼が来たらすぐ書き始められるよう、企画を練ってる最中です。雷に打たれたとかエピソード満載、波瀾万丈の88年を生きた北斎は、絶対オペラに向いていると思う。これをぜひ実現させたい。

僕の人生、あまりに退屈で普通すぎる

──最後の質問。本の題名『どうしてこうなっちゃったか』の「こう」は何を指してるんですか?

正直言って僕の人生、あまりに退屈で普通すぎると思う。物事は金銭面で測るものではないけど、作曲家を志す人は、僕を反面教師にしてほしいと思いました。僕自身は現状に満足だけど、作曲家にはもっと上に行きたい、名門オケに演奏されたいと思う人が多いので。なら何で現代音楽やっているの?というのは置いといて。

『どうしてこうなっちゃったのか』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトへジャンプします)

歴史上成功した作曲家は、皆、権力者とつながる政治的な才能があった。現代も同じ。でも僕など日々「何で普通に、予定どおり進まないの?」ってことだらけ。

今も某プロジェクトで、僕の問題じゃないのに、なぜか僕が解決しなきゃならないことになって、「マズいですよ、どうします?」って言われてる。大学教授やコンクール審査員の誘いが来ても、とにかく作曲していたいから断ってきた。そして、こうなっちゃったわけです(笑)。

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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