コロナ後は再編へ「病院経営」あまりに苦しい実態 人口減少、資金不足、後継者難で生存競争が加速
地域医療を担ってきた病院の移転をめぐって、仙台市が揺れている。発端となったのは宮城県が昨年9月に打ち出した県内4病院の再編方針だ。
方針では、①仙台赤十字病院(仙台市)と県立がんセンター(名取市)を統合、②東北労災病院(仙台市)と県立精神医療センター(名取市)を移転し合築(がっちく、1つの施設に併設)することが示された。
新病院の移転先は決まっていないが、赤十字病院とがんセンターとの統合で生まれる新病院は、仙台市の南に位置する名取市が誘致に名乗りを上げた。合築される新病院は、仙台市の北にある富谷(とみや)市が誘致をしている。
仙台市からすると2つの大きな病院が市外へ移転することになり、市当局や市民が反発しているのだ。
『週刊東洋経済』2月14日(月)発売号では「コロナ後を見据え、大再編に突入 病院サバイバル」を特集。病院大国ニッポンの課題や、医師会の裏側、製薬マネーと有力医師との関係などを取り上げている。
移転後の新病院の詳しい内容は明らかになっていないため、仙台市民や通院患者には不安が広がる。市は県に対し、計画案の詳しい内容の開示や住民への説明などを求めている。
各病院の経営状態は厳しい
県の再編計画の前提にあるのは、各病院の厳しい経営状況だ。
東北労災病院は過去5年、2億~9億円の赤字基調が続いている。「周囲の病院との競争が激しく、病床稼働率が低下している」(同院の徳村弘実院長)。県立がんセンターは県の財政支援によって黒字を維持しているが実質的には赤字状態、仙台赤十字病院も赤字が続く。