産業天気図(小売業−百貨店・スーパー) 売り上げは前年割れ続く。構造改革や経費削減、営業努力に懸命

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百貨店業界のジリ貧状態が続いている。日本百貨店協会がまとめた全国百貨店売り上げ速報によると8月も前年割れとなり、17カ月連続の前年割れとなった。地区別にみると、東京は21カ月連続の前年割れだ。ブランド品など身の回り品は比較的堅調だったが、冷夏の影響で季節衣料品が低調だったうえ、引き続き法人需要の減少傾向が続いている。
 大手百貨店では売り上げ減少のなか、本業である百貨店事業の強化へ事業再構築を推進したり、退職給付費用など人件費の削減などに取り組むところが目立つ。高島屋が優良子会社だった高島屋日発工業や、高島屋が2位株主だった相鉄ローゼンなどの株を売却、また人件費高で赤字だった米子店を別会社化した。三越は連結子会社4社と合併し、新生・三越として9月1日から新規上場、仕入れ・物流の共同化や人件費削減に取り組んでいる。東急百貨店は早期退職制度による大幅人員削減を断行した。一方で、伊勢丹は新宿店の新館をリニューアル、松坂屋は名古屋店を大幅増床、そごうは大宮店をリニューアルするなど、各社とも前向きの営業強化にも動いている。こうした百貨店事業の再生がどこまで売り上げ増につながるのか、不透明な部分はあるが、広告宣伝費や人件費の削減余地はまだあり、営業利益ベースではなんとか増益を維持していきたい考えだ。事業再編、構造改革に伴う特損を計上するところも多く、厳しい環境のなかで「再生」への努力はまだ続きそうだ。
 スーパーも販売苦戦が続いている。日本チェーンストア協会の調査では、今年8月まで既存店で14カ月連続で前年実績割れ。食料品はこのところ前年実績を上回ってくるなど底堅いが、衣料品は夏場の天候不順の直撃が尾を引く。秋物前倒しをしたが、効果は薄くまだ明るさは見えていない。家電など住居関連商品も同じ状況だ。イトーヨーカ堂、イオン、ダイエー、西友など、大手総合スーパーの既存店は上期いずれも前年実績割れ。各社の上期業績は売り上げ、営業利益とも計画未達の公算が大きくなっている。通期でも挽回は難しい情勢にある。
 ヨーカ堂は全店舗の半数で夜11時までの営業時間延長を実施し、既存店テコ入れを図っている。イオンは改装時期のスケジュール変更のほか、役員報酬の削減などで利益を捻出するほか、衣料品で新商品を多数投入し巻き返しを狙う。長期停滞の続くダイエーは、10月からのホークス優勝セールをきっかけに浮上を目論む。西友はウォルマートと共同開発のPB商品が頼み。ただ、衣料品取り扱いの少ない中堅・食品スーパーの既存店は比較的底堅い例が多い。ローコスト運営も効いて今期も増益を達成する企業が少なくない。
【木村秀哉、堀川美行記者】

(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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