「目標はアップル」、日本車両の鉄道ブランド戦略 台車や構体の技術を活用、第1弾は通勤型315系

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ブランド化による成果はすでに上がっており、これまで取引のなかった鉄道事業者からも「話を聞きたい」という問い合わせが来るようになったという。

とはいえ、単に「ブランド化した」というだけでは競合他社との差別化は図れない。では、エヌクオリスの優位性はどこにあるのか。この問いに対して、伊藤部長は「技術開発において“保守”を意識していることだ」と即答した。

一体プレス式で溶接箇所を減らした台車(記者撮影)

伊藤部長が保守の例として挙げたのは台車である。一体プレス式の台車枠を用いて溶接箇所を減らしたことで、亀裂が発生しにくいだけでなく、定期検査における探傷作業時間の大幅な短縮が可能になったという。また、車両の構体も水密性を高めてシール材の使用箇所を大幅に減らしたことで、経年劣化によるシール材の交換という負担の軽減につながった。

目指すは「リンゴのマーク」

マーケティング的な観点からいえば、エヌクオリスというブランドには大きな特徴がある。それはNとQを組み合わせたロゴマークがあることだ。

エヌクオリスのロゴマークが目立つ車内の銘板(記者撮影)

鉄道車両の車内には車端部にメーカーの銘板が貼られているが、315系の車内には日本車両の名前に加えてロゴマークが大きく記されている。社名よりもロゴマークのほうが大きくて目立つ。 「リンゴのマークを見れば、『これはアップル社の製品だ』『このスマホはiPhone(アイフォーン)だ』と誰でもわかる。われわれもロゴマークを見ただけで『この車両には日本車両の技術が使われているね』と思ってくれるようになってほしい」と伊藤担当部長は期待を込めて語る。

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当面は国内展開に軸足を置く。日本車両は数年前にアメリカ向け案件で大きな損失を計上したこともあり、「まずは国内での競争にいかに勝っていけるかを考えていく」(伊藤部長)としており、海外展開は消極的。しかし、将来海外にあらためて打って出る可能性はもちろんあるだろう。コロナ禍が収束し、誰もが再び気軽に海外旅行ができるようになったとき、遠い異国の街でたまたま乗った列車にエヌクオリスのロゴマークが付いているということも、決して夢物語ではない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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