「目標はアップル」、日本車両の鉄道ブランド戦略 台車や構体の技術を活用、第1弾は通勤型315系
車内で立っている乗客の負担を軽減するため、吊り革の設置数を増やすとともに、さまざまな身長の人が吊り革を掴みやすいよう吊り革の長さを10cmきざみで3段階にした。確かに吊り革の位置が低いと握りやすい。ただ、「あまり低い位置だと顔にぶつかることもあるので注意してほしい」(中村課長)。荷物を置きやすくするよう、荷棚の高さも211系と比べ約4cm低くしたほか、車両床面の高さを低くしてホームとの段差を縮小することで、ベビーカーや車椅子での乗降をしやすくしている。
こうした改善は乗客からの要望を反映してのものだが、中村課長によれば、とくに要望が多かったのは、車内空調に関するものだったという。「冷房が効かない、効きすぎるなど、要望の内容は人によってまちまち」。できるだけ多くの人の要望に応えるため、AIによる冷房制御を採用し、乗務員が手動で補正した時点のデータをAIが自動学習し、きめ細かな制御を行えるようにした。夏になったら真価を発揮しそうだ。
日本車両の新ブランド第1弾
315系を製造するのはJR東海傘下の鉄道車両メーカー、日本車両製造である。国内では日立製作所、川崎車両(川崎重工業の子会社)、近畿車両(近鉄グループホールディングスの関連会社)、総合車両製作所(JR東日本の子会社)と並び大手5社の一角を占める。
歴代の東海道新幹線の製造を手掛けているほか、リニア中央新幹線「L0系」の製造も担当する。在来線でも小田急電鉄のロマンスカー「GSE」から東京メトロ丸ノ内線「2000系」まで多彩な車両を製造。アメリカ向けの2階建て電車や台湾新幹線「700T」など海外向けの実績も豊富だ。
日本車両はJR東海から65編成352両の315系を受注し、2021年度から2025年度にかけて製造する。まとまった規模の生産であり経営の安定化につながることは言うまでもないが、その生産はそれ以上に大きな意味を持つ。315系は同社が打ち出した新ブランド「N-QUALIS(エヌクオリス)」の第1弾なのである。
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