「牛の糞まみれの沼」に潜ってわかった意外な世界 ありえないほど美しく、恐ろしい「水中洞窟」
どろどろの、ヘドロがたまったような池を見れば彼の疑いもわかるけれど、私は前回自分の見たものは理解できていた。「見た感じが最悪なのはわかるよ。でも、私を信じて、ポール。私、鍾乳石と洞窟を確かに見たんだから」。
彼は大きく息を吸って、そして笑顔で洞窟へ安全ガイドを引く作業を買って出てくれた。私は彼の後ろをついていくことになったのだ。
初めてここにやってきたときと同じように、汚れずに水に入るのは至難の業だった。重いスキューバダイビング用機材を担いだ状態で、泥水のなかをやっとのことで歩き、濃いポタージュスープをかき混ぜるようにして泥水のプールを進んだ。
私はひざをついて顔から泥水に突っ込む形で、ダイビングの優雅なスタートを切ったというわけだ。べたつく粘土のような泥が両足から流れ落ち、進行方向に線を描いた。ダイビング用ライトのスイッチを入れたが、水面下に淡いオレンジ色の光が見えるだけだった。私は池の中間地点に浮き、息を吐き出し、フィンで視界が遮られないように工夫した。
ついに前人未到の地へ
空気が肺から抜けると、ゆっくりと下降していった。耳に感じる水圧の上昇で、自分が暗闇のなかに進んでいることがわかった。ダイビング用ライトは、硫黄色をした霞のなかで、ようやく見える程度だった。水圧がかかるにつれ耳鳴りがしはじめ、私は足首をわずかに回転させながら、池の奥側に行けるよう、横に移動した。
そのとき突然、澄んだ水のなかを通りすぎた。このよい兆候が見えたところで、ポールは戻る順路を示してくれる白くて細い命綱を体に巻き付けながら、私を追い越して進んでいった。美しい鍾乳石が下がる狭い入り口を通り抜けると、スキューバレギュレーター越しにポールの大声が聞こえてきた――探検家が初めて何かを発見したときに感じるスリルだった。
洞窟はまるで、新品のタイムカプセルのようだった。そこにまだ誰も到達していないのは明らかだった。ほとんど透明の水は、時が止まったかのようだった。遮るものはなにもない。ゴミなんてひとつもない。私たちが初めて探索した地点の向こうには、誰も行ったことがないのだ。それはすべて、私たちが発見するための場所だった。
前回のダイビングの際に残した探索ラインの線を素早く通りすぎ、ポールに続いた。2人で入った洞窟のなかは、1人のときとは様子が少し違っていた。命綱を注意深く固定するためにより長い時間を割いた。同じ場所で長く留まることで吐き出す泡が沈泥を巻き上げ、もっと悪いことに、大きな泥とバクテリアの塊が、天井から私たちのところに落下してきていた。
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