独特の音がやみつきに、江ノ電「吊り掛け電車」 全国で姿消すが1000形には出会える確率が高い

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

この電車は、江ノ電1000形と称するシリーズの第3次車として、1983年に製造されている。基本的には1979年に登場した第1次車(1001号編成、1002号編成)と同じ形態ではあるが、構体の材料や細部で異なるところを見せる。なお、1981年に登場した第2次車の1101号編成も吊り掛け駆動車である。

この一連の1000形は初期のロットから製造後43年経過しているが、現在のところバリバリの現役車両であり、江ノ電の中でも吊り掛け、カルダンを含めると6編成の大所帯だ。江ノ電を訪れれば、必ず見かけることのできる電車だ。とは言え、製造後40年も経てば、そろそろ廃車の声が聞こえて来てもおかしくはないだろう。

実際、片道10kmの路線を34分もかけて走るのであるから、振動などでの痛みは少なかろうが、片側は海岸線なので塩害が考えられる。また、逆転器などの使用頻度も多いことから、その系統の電気回路の傷みも多いと推測できる。

終焉近づく1000形の初期ロット

江ノ電には1000形以前から在籍する大御所の305号編成もあるが、こちらは大規模な改修工事が行われていて、後輩の1000形に吊り掛け式がいる中、305号はカルダン式に改修されている。さらに、電装関係も1990年登場の2000形に準拠しているし、台枠は1925年頃に製造された玉南電気鉄道1形の物とはいえ、江ノ電の検車区員によれば、「もともと中型の鉄道線電車の物なので、1000形より強靭」という。

このような状況からすれば、305号よりも1000形のほうが先に整理される可能性も否定はできない。もっとも、筆者が仕入れた江ノ電関係者からの立ち話によれば、305号を先に整理するとすれば、カルダンを1201号あたりに移植するという話がないわけではないようだ。

しかし、いずれにしても、1000形の初期ロットに終焉が近づいていることに間違いはなく、「いつでも乗れる吊り掛け車」は、今のうちに体験しておくことを強くお薦めしたい。

なお、第4次車、第5次車(1501号・1502号)はカルダン式になってしまうため、江ノ電で吊り掛け電車を味わうのであれば、1001号・1002号・1101号・1201号の各編成を狙って乗車していただきたい。江ノ電の運行形態からして、吊り掛け車の運行がない日は、ほぼゼロに等しいはずだ。

「グオーン」という唸り声と、線路から伝わる振動は、他の車両では味わえない独自の世界観がある。古都鎌倉を走る、古いイメージの江ノ電。そしてリアルに古い走りと唸り声。これをヒストリックと言わずして何と言えよう。

渡部 史絵 鉄道ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

わたなべ・しえ / Shie Watanabe

2006年から活動。月刊誌「鉄道ファン」や「東洋経済オンライン」の連載をはじめ、書籍や新聞・テレビやラジオ等で鉄道の有用性や魅力を発信中。著書は多数あり『鉄道写真 ここで撮ってもいいですか』(オーム社)『鉄道なんでも日本初!』(天夢人)『超! 探求読本 誰も書かなかった東武鉄道』(河出書房新社)『地下鉄の駅はものすごい』(平凡社)『電車の進歩細見』(交通新聞社)『譲渡された鉄道車両』(東京堂出版)ほか。国土交通省・行政や大学、鉄道事業者にて講演活動等も多く行う。

 

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事