日本の不動産業界および不動産投資法人(J-REIT)、不動産市況は底を打ちつつあるため、業界見通しを「安定的」に変更《ムーディーズの業界分析》
アナリスト 高橋良夫
ストラクチャード・ファイナンス・グループ
アナリスト 山本秀康
ムーディーズは、2008年以降「ネガティブ」であった日本の不動産業界に対する見通しを、「安定的」に変更した。この見通しは、向こう12~18カ月間の業界環境の方向性を示すものである。
見通しを変更した理由は、09年に大幅なマイナス成長を記録した日本経済が、以降、緩やかながらも回復基調にあり、不動産市況も底を打ちつつあるためである。足元では、先進国経済の減速や円高もあり、景気の改善速度に対する不透明感はあるものの、今後12~18カ月を見通した場合、日本経済のマイナス成長が継続するなどして、不動産市況の悪化が続く可能性は低いであろう。
1. マクロ経済の見通し
日本の実質GDP成長率は、世界的な景気後退の影響を受け、09年に約5%のマイナス成長を記録した。しかしながら、その後は各国政府の景気対策や新興国の経済成長に支えられ、日本経済は緩やかながら改善傾向にある。ムーディーズは、10年と11年の実質GDP成長率を1.5~2.5%の間と予想しており、不動産業界の見通しもこのシナリオを前提としている(現在の市場コンセンサスもほぼこの範囲内)。