締め切りぎりぎりに作って、すぐ世に出す--『871569』を書いた箭内道彦氏(クリエーティブディレクター)に聞く

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--この語録にも、「金髪なのにイマイチなことやってたらカッコ悪い。」との言葉が入っています。

それからはわざと会社の出先表いっぱいに予定を書いて、会社に1週間ぐらい顔を見せない。「ひとり博報堂」と宣言したりして。

とにかくみんなで何かを相談して作るのが苦手だった。相談すると、相手の言うようにしても別にいいやとなってしまう。それを否定したり論破したりするのが面倒くさい。それが、全部自分だけでやると宣言したから、誰かに合わせていくことがなくなった。そうして自分なりの仕事の仕方を見つけた。

--独立後、会社と雑誌などにつけた名前「風とロック」の由来は?

あまり複雑な名前はつけたくなかった。風だけ、あるいはロックだけを考えたが、ともに登記されていて、偶然、二つが結び付き、「風とロック」になった。この名前に強さ、珍しさがあるとすれば、頭で考えたのではない、乱数表で言葉がつながったような偶然がある。そういう面白さが偶然性には存在する。

こういう仕事の仕方が実は多い。「流される」から遠くに行けると思っている。やっていることは、その場で起きた自分の想像を超えることを作品にしていく繰り返しなのかなと。他力本願というか、結果オーライというか、行き当たりばったりというか。それを目の前の相手と向き合ってそこから生み出す「合気道」によって美化している。

--それで、「時代の風」をとらえることができますか。

時代との付きあい方はいろいろある。高いところから俯瞰して、今おまえたちが欲しいのはこれだろうと投げる人たちもいる。たくさん市場調査をして、そこから法則を読み取る人もいる。それとまったく違っていて、自分も世の中の一人として、自分の好きなもの、感じたことを形にしていく。

原宿に会社があるのも、原宿をうろうろし、若い人たちの顔を見て、この人たちに何を見せたらビックリしてくれるか、そっと確認するため。世の中に一緒に流されるために、フリーペーパーを作っているとも言える。作ることで、自分にとって好きなことを再確認できるし。

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