アメリカの多数派工作は東南アジアで成功しない 経済安保での米中対立で劣勢強いられるアメリカ

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これに対し中国もASEANへの関与を強化している。習近平・中国国家主席は2021年11月22日に開いたASEAN首脳とのオンライン首脳会議で、両者の外交関係を「包括的戦略パートナーシップ」に格上げした。

習氏はこの時の演説で、「東洋文化は『自分の欲望を他人に押し付けない』こと」にあるとし、アメリカの人権・民主による「内政干渉」を批判。内政不干渉を定めた「平和5原則」や、非同盟をうたった「バンドン精神」を、ASEAN協力の基本にする姿勢を強調した。このほか習氏が挙げたのは、(1)ウィンウィン協力と平和的発展の道、(2)アジア金融危機や新型肺炎の流行などの課題で共同対処、(3)包摂と相互理解による開かれた地域主義の構築―など、経済協力を中心として関係強化をうたった。一方、アメリカも12月12日、イギリスのリバプールで開かれた主要7カ国(G7)外相会合に、ASEAN外相を初招待した。アメリカ、中国ともにASEANの取り込みに必死な姿が見える。

クアッド拡大版目指す「新構想」

バイデン大統領が10月末の東アジアサミットで、東南アジア外交の新基軸として「経済安保の新構想」を打ち出した背景には、中国の環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)への正式加盟申請がある。アメリカはTPP離脱によって、通商分野での東南アジアでの足場を失った。劣勢を挽回しなければ「インド太平洋戦略」の中心地域で、対中競争には勝てない。

日本とアメリカ、オーストラリア、インド4カ国の連携枠組み「クアッド=QUAD」首脳会合にインドを引き入れることに成功したものの、インド自身は同盟には依然として慎重だ。このため、クアッドの性格を、安保同盟から経済安保枠組みへと変化させた経緯がある。

レモンド商務長官らの話を総合すると、「経済安保の新構想」は(1)半導体のサプライチェーン(供給網)の再編、(2)デジタル経済、(3)クリーンエネルギー、(4)中国の「一帯一路」に対抗する途上国向けインフラ整備支援―などからなる。

バイデン政権は、共和党の力が強く議会承認のハードルが高いTPPに復帰する意思はまったくない。「新構想」の中身は、クアッド首脳会合で合意した項目とほぼ重なっている。クアッドもASEANとの協力を模索しているが、ASEAN加盟国は中国を意識してクアッド協力には慎重だ。このため「新構想」は、クワッドを事実上拡大した「緩やかな協力枠組み」を想定しているとされる。

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