『ソルト』--危機意識が経済を変える《宿輪純一のシネマ経済学》

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このような国を挙げての海外戦略のなか、各企業の海外進出も著しい。特に成長著しい新興国への進出に注力されている。特に政府が国を挙げて先頭に立ち、窓口を一本化させて対応している。実際に原子力をはじめ、海外のインフラ案件での活躍は著しい。

このような海外政策は、2度の危機を経験した「危機意識」が推進するものである。後がないという感覚である。国内の痛みは相当なものがあるだろうが、推進していく政治力は大したものである。この韓国のイメージは、「すべてを失って」も心が折れないソルトを連想させる。

それに対して日本は、FTAは進まず、財政危機の状況になっても、韓国のような経済を改革するような政策は取れない。ある意味、いったん、国債価格や株価が下落して、本当の危機になったほうが、危機意識が醸成されて本気になるのではないかと考える向きも出てきた。
 
 このままでは、日本は昔から言われていることであるが、ゆでられてゆっくりと煮上がっていく「ゆでがえる」になりそうな気がしてならない。自分を変えるのは少し悲しいけど、危機意識と、ワクワク感である。

 「続編」を予想させる終わり方であり、早くも期待している。

ソルト
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
7月31日(土)より、丸の内ピカデリー1ほか全国夏休みロードショー

しゅくわ・じゅんいち
映画評論家・エコノミスト・早稲田大学非常勤講師。1987年慶應義塾大学経済学部卒、富士銀行入行。シカゴなど海外勤務などを経て、98年UFJ(三和)銀行に移籍。企画部、UFJホールディングスなどに勤務。非常勤講師として、東京大学大学院、(中国)清華大大学院、上智大学、早稲田大学等で教鞭を執る。ボランティア公開講義「宿輪ゼミ」代表。財務省・経産省・外務省等研究会委員。著書は、『ローマの休日とユーロの謎』(東洋経済新報社)、『アジア金融システムの経済学』(日本経済新聞社)他多数。公式サイト:http://www.shukuwa.jp/、Twitter:JUNICHISHUKUWA

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