『ソルト』--危機意識が経済を変える《宿輪純一のシネマ経済学》
ちなみに今回の来日もハードなスケジュールだった。自家用ジェットで7月26日にロシアから来日して1泊し、27日の夜には最近、経済に勢いがある韓国に向かった。
彼女は今回のような強いエージェント役が多い。「ボーン・コレクター」「テイキング・ライブス」「Mr.& Mrs.スミス」「ウォンテッド」もそうである。本作品も、どんな局面でも気持ちが折れない彼女の強さが本作も支える。彼女は危機の中で、自力で突破していくのである。
“危機意識”で経済改革を行った国がある。ほかでもない「韓国」である。1997年、そして2008年の2回の経済(通貨)危機の中を経て、経済改革を達成した。
危機克服の中で、日本よりも格段に早く、海外市場を主眼に置いた政策に転換している。まずは「ハブ戦略」である。空港(仁川)・港湾(釜山)は世界有数のインフラになっている。金融面でも、証券取引所をはじめとし金融市場も合併させて、釜山に集中し、その一翼を担う先物市場は、取引量世界一の座をシカゴと争っている。
さらにFTA(自由貿易協定)をテコとした貿易政策も強力だ。韓国も日本と同じように農業問題を抱えながらも、署名済みのものも合わせて貿易額(2008年)の35.3%がFTA締結国比率となっており、その中になんとEUと米国という巨大な市場も含まれている(日本[2009年]は同じく16.5%)。このことは、サムスンやヒュンダイが、日本の製品よりも海外市場で非常に有利に販売できる要因となっている。