「サンタなどいない!」相次ぐ教会サンタ批判の訳 司教が子どもに「親がウソをついている」と説教

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しかし12月6日、聖ニコラウスの日に行われたスタリアーノ司教の説教はとりわけ身も蓋もないものだったと、子どもたちを引率していたジュリアーナ・スカルナート教諭は語る。子どもたちは全員9歳以下だった。

教諭によると、司教は「サンタに言及しなくてもよかったはず」なのに、サンタは「想像上の人物であり、実在しない」とわざわざ言い放った。そして1人の子どもが「パパとママは、サンタさんは本当にいるって言ったもん」と抗議すると、司教はこう言い返したという。お父さんとお母さんに「うそつき」と言ってやりなさい。

これについて司教は、自身の記憶ではもっと配慮した言い方でサンタの由来を説明しただけだと語っている。司教が「ソフトドリンク産業の消費主義複合企業が生み出した有害な産物」と呼ぶサンタの起源は、聖ニコラウスという歴史上の人物にさかのぼる。4世紀にミュラ(現在のトルコ)で司教をしていた慈悲深い人物で、言い伝えによると貧しい人々に心を砕いていた。

スタリアーノ司教が大切にしているのは、この点だ。

「ファーザークリスマス(と呼ばれるサンタ)は子どもたちみんなの父親なのか、一部の子どもたちの父親なのか」。司教はこう言って、サンタ批判を開始した。「ロックダウンの間、それまでサンタが来ていた家庭にサンタは来なくなった。どうしてだろう。新型コロナウイルスを恐れていたわけでは絶対にない」。

そして司教は、イタリアの子どもたちが幼子イエスに願い事をしていた時代を懐かしそうに振り返った。「あの頃はサンタやらトナカイやら、映画を観に行ったり、ボーリングに出かけたりなどというアメリカのガラクタ文化に侵されてはいなかった」。

ローマ教皇もサンタを擁護せず

ローマ教皇フランシスコでさえ、自らの配下にある司教の発言からサンタをかばおうとはしていない。バチカン(ローマ教皇庁)にコメントを求めたが、返答は得られなかった。

スタリアーノ司教は、自身の発言は教皇の考えに完全に沿ったものだと主張している。

「率直に言わせてもらうが、サンタは裕福な家庭の子どもたちにだけプレゼントを届ける」のであって、その子たちがいい子にしていたかどうかとは関係がないと司教は話す。

司教は毎年クリスマスに貧しい家庭や移民の家庭を訪問しているが、そうした家庭の子どもたちは「サンタを一度も見たことがない」と言う。

司教によると、教会で母親たちから反論が出ることはなく、中には説教のおかげで疑念が確信に変わり、力のこもった発言を行う児童もいた。「前から気づいていたよ。サンタはパパだってね」。ある子どもは大声でそう言ったという。

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