岸田首相「任期中の改憲」掲げたモヤッとする思惑 「自民党のリベラル」宏池会の領袖がなぜ?

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これまで、衆参の憲法審査会では立憲民主などが開催に抵抗し、前通常国会での開催は、衆院4回、参院6回にとどまった。しかし、今回の衆院選での野党陣営の改憲勢力の拡大で、自民内には「維新、国民を巻き込める今こそが、改憲論議を一気に進めるチャンス」(国対幹部)との声が強まっている。

確かに与党に維新、国民を加えると、衆参両院で改憲の国会発議に必要な3分の2以上となる。しかも維新と国民は衆院で計52議席となり、公明党の32議席を大きく上回る。このため、岸田首相周辺にも「維新、国民と連携すれば、公明党は改憲論議に乗らざるをえなくなる」との期待が膨らむ。

とはいっても、岸田首相があえて任期中の改憲実現を声高に叫ぶことへの自民党内の抵抗も少なくない。岸田派になお強い影響力を持つとされる宏池会前会長の古賀誠元幹事長も「改憲実現に前のめりになるのは、本来の宏池会の理念から大きく外れている」などと厳しく批判する。

その一方で自民党最大派閥の細田派(清和会)は11月11日の総会で、安倍元首相の派閥復帰と会長就任を決め、「安倍派」に衣替えした。安倍氏はあいさつで、首相在任中から「悲願」と繰り返してきた改憲実現について「立党以来の党是だ。議論の先頭に立とう」と呼び掛けた。

呉越同舟の「岸田・安倍共闘」は波乱必至

岸田首相が改憲実現に踏み出すのなら、全面支援する考えをアピールした格好だ。しかし、安倍氏が党内保守勢力を束ねて、国会での改憲論議に圧力を加えれば、立憲など反改憲勢力が反発し「憲法審査会での改憲論議本格化への雰囲気が壊れ、元の木阿弥にもなりかねない」(岸田派幹部)というリスクもはらむ。

そもそも岸田首相にとって改憲実現への意欲表明は「反岸田色の強い党内保守派の支持取り付けによる政権安定化が狙い」であることは間違いない。そのうえで、「自然な流れで改憲実現にこぎつけられれば、政権の最大のレガシーになる」との願望もにじむ。

しかし、そうした思惑が与野党だけでなく国民にも見透かされれば、岸田首相が売り物とする「誠実さ」にも疑問符が付き、内閣支持率下落の要因ともなりかねない。

第2次岸田政権発足までの一連の党・内閣人事で目立った“安倍離れ”に安倍氏がいらだつ中、「改憲での岸田・安倍共闘」という“政局的呉越同舟”の結末は、まだまだ波乱必至というのが実相といえそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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