北朝鮮、ついに人民の生活を意識し始めた 「突貫手抜き工事」戒める、異例の論文発表

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「突撃隊式」の弊害のほかにも、同論文では「自力更生を行うとしながら材質的要求が保証されていない代用品を使って質を落としている」、「人民生活と健康に害を与える不良品や国産品ではない製品が生産されている」と指摘、このようなことがないように学習と管理をしっかりと行うべきだと提案している。

しかも、このような生産・工事を行っているから、「われわれ(北朝鮮)は物質経済生活において世界的な流れから遅れている点が少なくはない」と述べ、「生産物と建造物の質を高めれば、他国の商品に目を向ける現象はなくなるだろう」としている。

これは、北朝鮮国内の工場や建設現場では、党幹部や管理者が資材などの横流しが横行しており、そのため実際の経済活動に支障をきたしていることを間接的に示したものだと思われる。

「人民生活向上」をアピール

これまで韓国などのメディア報道や脱北者の証言などから、北朝鮮ではいいかげんな生産・建設活動が行われているという情報は入ってきていた。だが、このように国家を代表する論文集で「手抜き工事」「突撃隊式活動」の例を取り上げ、改善を促すような内容が掲載されたのは非常に異例だ。

「世界的な流れに合っていない」という指摘も見られるが、これは故・金正日総書記や金正恩第1書記がこれまで発言した内容であり、演説の中でも「足は北朝鮮にしっかりと着けて、目は世界に向けよ」という言葉がよく出てくることと合致する。

特に、これまで明らかにしなかった「汚点」をあえて示した論文を発表したのは、「人民の生活向上」を主要課題として掲げる金正恩政権の意向の延長線上にあるものだろう。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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