"GDP想定外ショック"で綻ぶ日銀シナリオ 黒田日銀のシナリオに狂いはないか

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日銀にとってもう一つの誤算は、円安による輸出の回復、というシナリオが修正を迫られていること。

これまで「横ばい圏内の動き」としていた実質輸出について、ついに8月の金融経済月報で「弱めの動き」と表現を下方修正。「一昨年来の大幅な円安にもかかわらず、輸出が増えなかったことこそ最大の想定外であり、景気がぱっとしない背景の一つ」(村嶋氏)。

7~9月はどこまで回復?

今後の焦点は、7~9月期にどこまで回復するかだ。11月から12月にかけて速報と確報が公表される7~9月期のGDP次第では、年末に判断することになっている、税率10%への消費税再増税の先送りもありうる。

だが、谷深ければ山高し。今のところのコンセンサス予想は、年前半より高めの4.08%の見込みだ。

「数字が何%になるかもさることながら、問題は中身。消費は回復し、設備投資も輸出もおそらく増えるだろう。在庫がそうとう積み上がっており、需要があっても生産が伸びないと、巡り巡って景気を悪くしてしまう心配はある。だが、4~6月期に駆け込みの反動減は、出尽くしたのではないか」(野村証券の桑原真樹シニアエコノミスト)との見立てである。

ただ、生産や設備投資に関する足元の指標は、強弱感が交錯している。6月の鉱工業生産は前月比3.4%マイナス。6月の機械受注(船舶・電力を除く民需)も8.8%のプラスと、ともに市場予想を大きく下回った。一方、日本政策投資銀行が8月に発表した2014年度設備投資計画調査によると、企業の国内設備投資は前年比15.1%増と大きな伸びの見込みだ。

「輸出や消費が弱くても、設備投資だけは緩やかに伸びていって景気を支えてくれる、というのが市場のコンセンサス。だが、そこが実は違うとなると、景気シナリオは根本的な再考を迫られる」(村嶋氏)

日銀による前例のない質的量的緩和がスタートして1年余り。一種のショック療法が人々の期待を変え、賃金上昇や設備投資に火が付き、持続的成長に結び付く──。今年後半、このシナリオの持続性が問われることになる。

(撮影:尾形文繁 「週刊東洋経済」2014年8月30日号<8月25日発売>掲載の「核心リポート05」を転載)

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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