バイトマン独連銀総裁退場はラガルドへの抗議か 連銀総裁・ECB理事辞任に見る「ドイツの孤独」

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ドイツ連銀は声明文で、今年刷新されたECBの新たな金融政策戦略で、ラガルド総裁が2%を上限とすることにこだわらない姿勢を示したことに対して、「インフレ目標のオーバーシュートは却下されている」、「デフレリスクだけに注目するのではなく、将来的なインフレの脅威を見失わないことも重要だ」と釘を刺している。「戦略自体は合意に達したが、これをどうやって具現化していけるかにかかっている」という旨が総じて強調されている。

形式的な辞任挨拶の中、この部分だけはバイトマン総裁の強い意志が透けて見え、裏を返せば「インフレを容認した」と評価されることの多いECBの新たな戦略に関して思うところがあったのではないかと推測する。金融政策戦略が刷新される以前からバイトマン総裁の反意は少数意見として黙殺されることが常であったが、今後はその構図が鮮明になる可能性が高く、信念を貫けないならば退くという選択に至ったのかもしれない。

ラガルド体制のグリーン戦略にも批判的

また、ラガルド体制においてECBが気候変動対応に傾斜していることもバイトマン総裁の本意ではなかったことが知られている。新たな金融政策戦略ではインフレ目標の対称化(巷間2%オーバーシュート容認とされる)のほか、気候変動対応への貢献が戦略に明記された。

バイトマン総裁はラガルド総裁がECBに着任する以前から、中銀のグリーン化に警鐘を鳴らしてきた代表的な論客である。気候変動対策は「あくまで選挙で選ばれた政治家の仕事であり、中銀が環境政策を推進する民主的な正当性はない」と断じている。

2019年10月時点でバイトマン総裁は「われわれの責務は物価の安定であり、金融政策の実施においては市場の中立という原則を尊重しなければならない」と述べ、グリーンボンドを買い入れるような行為は「緩和が必要な時だけ気候変動対策に関与する」という意味でほとんど理解されないと一蹴していた。

ちなみに2019年10月と言えばラガルド総裁の着任(同年11月)直前である。そのラガルド総裁が着任以前から気候変動対策への貢献につき熱弁を振るっていたので、両者の不和を心配する声はあった。バイトマン総裁は声明文でラガルド総裁への謝意を示しているが、実際はそうした溝も辞任の遠因なのかもしれない。

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