京急、旧ホテルパシフィック「解体直前」最後の姿 「アリガトウ」駅前開発の象徴に描く"品川愛"

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だが、ホテルパシフィック東京は老朽化などを理由に2010年9月末で閉館。その設備を活用して2011年4月、宿泊特化型の「京急EXイン品川駅前」(のちの「京急EXホテル品川」)と、グループ外企業が運営する飲食施設や婚礼施設などが入るシナガワグースが開業した。

周辺に高層建築がなかった当時のホテルパシフィック東京(写真提供:京急電鉄)

ホテルは至れり尽くせりのフルサービスの提供はなくなったものの、駅前の好立地が人気でビジネス利用が多い平日は900を超える客室がほぼ満室になったという。有田焼のタイルをぜいたくに使った外観やシャンデリアが輝くロビー、滝の水が流れる庭園など、お手軽な宿泊料金ながら最高級ホテルの雰囲気を随所に感じられる特異な施設だった。

そして10年後の2021年3月末にはシナガワグースも営業を終了。閉館が近づくと、ホテルパシフィック時代を含め宿泊や挙式の思い出がある人々も別れを惜しんで次々と訪れるようになり、ロビーに設置したメッセージボードにはたくさんの言葉が寄せられた。

過去にも窓文字でアピール

品川駅へ向けて窓文字を発信するのは今回が初めてでない。ホテルパシフィック東京が閉館した2010年秋には、羽田空港国際線ターミナル駅(現在の羽田空港第3ターミナル駅)の開業に合わせ、窓の明かりで「羽田へKEIKYU」とアピール。ほかに「世界へ羽田」の文字と電車マークの組み合わせや「merry X’masとクリスマスツリー」、「火の用心」といったデザインもあった。

2010年のホテルパシフィック東京閉館後の窓文字(写真提供:京急電鉄)

今後、京急はトヨタ自動車との共同事業で、シナガワグースの跡地にオフィスやホテル、国際会議や展示会などの「MICE」を用途とする大型複合施設を建設する方針だ。

これ以外にも品川駅周辺では、京急線の地平化と東西自由通路の延伸といった大改造が予定されている。また、北側の高輪ゲートウェイ駅周辺でも「品川開発プロジェクト」が控えている。

紙を貼り付ける作業中、窓の下には品川駅周辺で進む工事の様子が見えた。京急やJR在来線、新幹線など、さまざまな列車がひっきりなしに行き交い、半世紀にわたって宿泊客の目を楽しませてきた景色もついに見納め。数年後、再開発で新たに建ったビルから眺める駅の風景は、現在とはかなり異なって見えるに違いない。

橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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