ブリヂストン、好決算も売り上げは期待外れ 上方修正の理由はもっぱらゴム価格安

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2点目は、利益率が高く、ブリヂストンが伸ばすべき戦略商品としている鉱山用ラジアル超大型タイヤの販売が落ち込んでいることだ。鉱山会社の在庫調整によるもので、鉱山の稼働率は回復していることから、出荷は第1四半期をボトムに回復の兆しをみせているものの、通期でも前期実績を割り込む見通しだ。

3点目は、日本と並んで利益の源泉となっている北米市場で、数量が前年比では伸びたものの、期初の想定は下回ったこと。北米では、中国メーカーの安いタイヤの流入もあり、汎用品の価格帯は競争が激化している。ブリヂストンは、安易に価格競争しないという方針をとっており、他社が価格攻勢をかける中で数量は思うように伸びなかったもよう。また、中南米でも政情不安のベネズエラなどで前年を下回る見通しだ。

カギを握るラジアルタイヤ需要

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タイヤ業界は価格競争が激しい

「天然ゴムは増産されており、今年は豊作。少なくとも今年は急激に価格が上がる要素はない」(ゴム資材商社・加藤事務所の加藤進一社長)。

ただ、来期以降を考えるとゴム価格はそろそろ下げ止まると考えられ、今期のような利益押し上げ効果は期待できない。安価なタイヤで勢力を伸ばす中国メーカーの存在もあり、ブリヂストンが価格を維持したままで、数量を伸ばし続けられる保証はない。

今後の業績を占う上では、好採算の鉱山用ラジアルタイヤの需要が1つのカギを握りそうだ。今年の9月には、海外で初となる鉱山用ラジアルタイヤの生産工場が米国サウスカロライナ州で稼働する予定。その需要の回復が本格化すれば、冬用タイヤ、低燃費タイヤなどといった他の戦略商品(高付加価値商品)とともに利益の大きな柱となってくる可能性があるからだ。

(撮影:今井康一)

常盤 有未 東洋経済 記者

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ときわ ゆうみ / Yuumi Tokiwa

これまでに自動車タイヤ・部品、トラック、輸入車、楽器、スポーツ・アウトドア、コンビニ、外食、通販、美容家電業界を担当。

現在は『週刊東洋経済』編集部で特集の企画・編集を担当するとともに教育業界などを取材。週刊東洋経済臨時増刊『本当に強い大学』編集長。趣味はサッカー、ラーメン研究。休日はダンスフィットネス、フットサルにいそしむ。

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