日本外交官が苦言「日本が韓国に失望した」理由 「親韓派ほど韓国から離れてしまった」日韓関係

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「コロナ禍が落ち着き、ビジネスマンや学生が再び自由に往来できることを切に期待しているが、ただお互い客観的に、少し余裕のある気持ちで相手を見、国と国との約束や礼儀を守る関係になることを願っている。以前は問題が生じれば韓国が日本に憤慨し批判する場面が多かったが、最近はその基本構図が変わった。韓国はまずこの点を冷静に直視していただきたい。“われわれは日本のことをよく知っている、日本は韓国を知らない”という固定観念からは何も生まれないだろう」

道上氏は現役の外交官ながら著書やインタビュー、寄稿文、講演など公開的な舞台でも精力的に“対外発信”をしてきたことで知られる。日本では『日本外交官韓国奮闘記』(文春新書)や『日本エリートはズレている』(角川新書)などの著作があり、韓国でも自著を出版している。

韓国政権内の「視野の狭い仲間内の考え」

しかし現役外交官をめぐっては先に、在韓日本大使館の総括公使が2021年8月、韓国メディアとのオフレコ懇談での“不適切発言”を暴露され、解任、帰国させられる事件が起きている。非公式、非公開の席の懇談で韓国外交を「マスターベーション(自慰的)」と比喩したことが“不適切”とされたのだが、この事件の余波として在韓日本大使館では平気でマナー違反をやる韓国メデイアに対し“警戒令”が出ている。

直近の道上氏は国際機関に所属しており日本大使館所属ではなかったとはいえ、今回のインタビューは日本外交官の間でのそうした“自粛ムード”を押してのものだ。それだけに韓国外交に対する直接的かつ具体的な批判には、慎重にならざるをえない。

例えば、韓国外交批判の中で「コード」という言葉が使われているのがそうだ。これは文在寅政権下で「コード人事」などといって韓国でよく批判的に使われている。政権を動かしている反政府学生運動出身者の左翼民族主義的な「視野の狭い仲間内の考え」といった意味で、文政権の対日外交に対する不満、批判をそうした言葉でチクリ語ったというわけだ。

道上氏も韓国に対し「リスペクトしていた人ほど深く失望」している1人だろうが、今後とも日本外交の対韓言動が萎縮してもらっては困る。経験豊富な知韓派として「リスペクトしつつ、言うべきことはちゃんという」という姿勢は維持してほしい。

黒田 勝弘 産経新聞ソウル駐在客員論説委員、神田外語大学客員教授

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くろだ かつひろ / Katsuhiro Kuroda

1941年生まれ。京都大学経済学部卒。共同通信ソウル支局長、産経新聞ソウル支局長兼論説委員を経て現職。1978年韓国延世大学留学。ボーン・上田記念国際記者賞、菊池寛賞および日本記者クラブ賞を受賞。著書に『韓国 反日感情の正体』『隣国への足跡 』『韓国人の研究』『韓(から)めし政治学』『反日vs. 反韓 対立激化の深層』など多数。2021年4月から神田外語大学客員教授。

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