鉄道大手、旅客回復の影で「通勤定期減」の衝撃 4〜6月期、出社減り「定期外」へのシフト鮮明に

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関東の大手私鉄の多くは通勤定期と通学定期の実績を発表しているが、それを見ると通勤定期の伸びは軒並みマイナス。定期輸送人員の伸びは高校や大学など通学定期の回復がもたらしたものであり、通勤定期の輸送人員は減っているのだ。

「テレワークや在宅勤務の進展で定期から定期外へのシフトが進んだ」と、各社の担当者が口をそろえる。出社する頻度が減り定期券が不要になった。

1カ月定期の場合、多くの鉄道会社では割引率を30%台から40%台に設定している。仮に割引率を40%だとすると、1カ月30日間のうち出社するのが17日以下なら、定期券代を支給するよりも実費支給にするほうが企業にとっては従業員の交通費の削減につながる。ここまでぎりぎりのラインで線引きするのは極端だが、ある会社を例に取ると、過去の勤務実績を基準に営業日数における出社回数を算出し、出社率が45%以上なら定期券代を支給、45%未満なら実費精算としている。

定期離れで「競合路線へ移行」も?

こうしたコスト重視の企業行動が通勤輸送人員の減少という形で現れた。裏返すと、定期外輸送人員が大幅に増加したことは、定期から定期外へのシフトを含んでいたともいえる。

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企業側がコスト削減策として定期券から実費精算に切り替えているのだから、鉄道会社にとっては収入の減少ということになる。鉄道会社のデメリットはそれだけではない。定期券客とは鉄道会社にとっては固定客である。大幅な割引を行っても自社線を活用してくれることで、長年にわたって駅ナカ商業施設など鉄道以外の事業にお金を落としてくれるという副次効果があった。

定期券という“縛り“から解き放たれたことで、通勤経路を競合路線に切り替えてしまうという動きが出ないとも限らない。コロナ禍の利用者減が落ち着いた後は、競合路線で利用者を奪い合う大戦国時代に突入するかもしれない。そうなると、ポイント付与などのサービス特典が「選ばれる路線」になるためのカギを握る可能性もある。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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