EUの動きも活発だ。2011年に、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」を国家、企業が使用することを目指すことを盛り込んだ「欧州CSR戦略」を発表。その後、戦略を着実に実行に移している。
2013年には業種別(情報通信技術・人材派遣・石油とガス)および中小企業向けの人権ガイダンスも発行した。加盟国にも、ビジネスと人権に関する国家プランの策定を促し、すでに英国、オランダ、デンマーク、イタリアなどで実現している。
さらに、国際的な合意は進んでいるとはいえ、あくまで企業の自発的な活動に委ねられているに過ぎない現況を変えるかもしれない動きも出てきた。
2014年6月にエクアドルが、「依然、企業の人権侵害が続き、状況が改善していない」として、国連で国際的な条約締結による法規制化へ向けた作業部会設置を提案。多数決で設置が決まったのだ。
これにより、今後、人権関係の法的規制が急速に進むことも予想される。企業としてこうした動きを先取りしておくことは、他社との優位性を保つ面からも大切だ。
まず企業内で「人権の重要性」共有を
企業の中には「人権について具体的に何をしたらよいのか、どう取り組めばよいかわからない」、「社内を説得できるほど人権に取り組む理由が明確ではない」という声もある。
確かにCSR担当部門だけでは、その企業の人権問題のすべてをカバーすることはできない。人事、安全衛生、調達、営業など幅広い部門の関与が必要なため、実際の取り組みは簡単ではない。さらに、経営陣の理解も進まず、企業全体としての活動に至っていないケースも多い。
そこで大切なのは、まず企業内で人権の重要性を理解することだ。なぜ企業が人権問題に取り組まなければならないのか、社内・各地域で重要な事項を洗い出し共有する。そして、「国際社会でビジネスをしていく際に欠かせない」という共通認識を持たなければならない。
人権の取り組みは企業規模や業種により重要な部分が異なる。全社にかかわる部分と、個別の事業を行っている世界の国や地域、既存のマネジメントの体制によっても対応分野を変えていく必要があるだろう。リスクの高さや緊急性から優先度を決めていかなければならない。
欧米の先進企業は、それらを見極め、企業にとって人権リスクの高い分野やカントリーリスクが高い地域に限定して、実施を進めている。国際社会の中で「人権問題は企業には関係がない」とはいえない状況になっているのだ。日本企業も世界の動きに遅れないよう、対応を進めていくことが必要だ。
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