日立製「新型特急」を大量導入、台湾鉄道の狙い 2024年までに600両を納入、デザインの特徴は?

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そこで、既存車両の置き換えに向けた検討が政府内で進められた。当初、入札の開始は2016年半ばの見込みだった。しかし、同年に行われた総選挙で政権交代が起き、入札条件の見直しが行われた。2017年暮れに公開入札条件が再発表され、2018年中に日立とシュタッドラー(スイス)の2社が選考に残り、同年中に日立への発注が決定した。

東部幹線の主力を担う日立製の振り子式車両「太魯閣(タロコ)号」TEMU1000(編集部撮影)

台湾では東部幹線の中・長距離列車用に、日本メーカー製の電車が主力として活躍している。カーブでの高速走行が可能な振り子式台車を用いた日立製の「太魯閣(タロコ)号」TEMU1000と、空気ばね(エアサスペンション)による車体傾斜装置を備えた日本車輌製造製の「普悠瑪(プユマ)号」TEMU2000だ。これらの車両は東部幹線の高速化と輸送力増強に寄与しているが、いずれも車両編成は8両で、増大する需要を賄うには十分とは言えない状況にあった。

新車は「振り子式」採用せず

今回の車両置き換えプロジェクトにおいては、振り子式車両の導入は見送った一方、車両編成は12両に長大化するという条件で取りまとめられた。11両が普通車、1両が商務車(日本のグリーン車に相当)で、全50編成のうち2編成は商務車ではなく食堂車になるという。受注時の日立の発表資料によると、営業最高速度は時速140kmだ。

非電化区間の優等列車に活躍してきた日立製の特急用ディーゼルカーDR2900(写真:dentyu /PIXTA)

日立は前述のTEMU1000のほか、1986年に特急用ディーゼルカー「DR2900」、1990年に「DR3000」を納入しており、台鉄との関わりは長い。

ただ、今回の「EMU3000」納入をめぐっては、台鉄側の意向だったのか、積極的な情報公開が避けられた状況が垣間見える。

台湾では今年4月2日、花蓮県で「タロコ号」TEMU1000が線路を塞いでいたトラックと衝突した後にトンネル内に激突し脱線。乗務員と乗客合わせて498人のうち49人が死亡、200人以上が負傷する大事故が起きた。この事故は、工事に使われていたトラックの線路内への転落が原因と判明しており、車両そのものには問題がない。とはいえ、台湾と日本双方の鉄道関係者が受けた衝撃の大きさは想像を超えるものだっただろう。

そうした経緯もあってか、EMU3000の動静は、初回納入分車両がほぼ落成という時期になって、ようやく笠戸事業所のフェンス越しに撮影された車両が台湾の現地メディアを通じて伝えられた程度にとどまった。

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