Fマリノスから「NISSAN」ロゴが消える日 日産が英マンチェスターとスポンサー契約する意味

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とはいえ、持続不可能なクラブにそのままカネを出す投資家はいない。そこで、日産はCFGへスポンサードすることで資金を提供、その一部がFマリノスへの出資に回る仕組みをつくった。日産にしてみれば、Fマリノスに直接資金を投じるだけでは、これまでと同じく“死に金“になってしまう。CFGを経由すれば、世界的な広告効果を狙えるうえに、CFGのノウハウをFマリノスに生かし、経営再建を図れる。死に金が“生きた金“になるわけだ。

日産にとって、2013年1月期には17億円弱にまで拡大したFマリノスの債務超過に対して、CFGからの出資金と合わせ、直接的な損失補填も実施し、2015年1月期での債務超過解消にメドをつけた。

一方、CFGサイドから見れば、Fマリノスを傘下に取り入れることで、日本のサッカー市場に大きな足がかりを得ることになる。CFGのフェラン・ソリアーノCEOは「日本のサッカー市場には成長機会がある。他のアジア諸国に比べ、リーグなどの制度がしっかり確立しているのもメリット」、とFマリノスとの提携理由を語る。スペインの名門FCバルセロナでクラブ運営の最高責任者を務めたこともあるソリアーノCEOは、かつて日本市場について、「日本は経済力があり、サッカー好きも多い。一方で、欧州リーグとJリーグではレベルの差が大きく、競合することもない」、と語るなど、かねがね欧州のクラブチームにとって、日本市場は魅力的との認識を示していた。

マンチェスターの選手がFマリノスに来る?

今後、FマリノスはCFGのもとで事業拡大を目指すことになるが、「すでに人材交流などが進んでいる」、とFマリノスの嘉悦朗社長は説明する。マリノスのフィジカルコーチがマンチェスター・シティで学んでいるほか、CFGから6人のチームがFマリノスに来て、チーム強化や事業展開について協議を開始しているという。

嘉悦社長は「トップチームの強化では、CFGの世界的スカウトネットワークに参加できることは大きなメリット。すでにFマリノス側の要望選手のスペックは伝えてあり、8月のスカウト会議にも参加する」という。またソリアーノCEOは「CFGの所属選手がFマリノスでプレーすることもありうる」と見通す。下部組織の強化についても、ジュニア・ユースやユースの選手が、マンチェスター・シティで学ぶ機会などが設けられることになる見通しだ。

事業面でもCFGの集客力に期待を掛ける。マンチェスター・シティのファンは、全世界に300万人ともいわれ、そのパワーはFマリノスの比ではない。CFGがFマリノスと提携したと発表しただけで、Fマリノスのウェブサイトのアクセスが跳ね上がったほど。こうした力を背景に、広告獲得面では「Fマリノス単独では関心を持ってもらえないようなグローバルなクライアントにもアクセスが可能になる」と嘉悦社長は力を込める。CFGのネットワークを活用し、国内だけに限られていたクライアントの間口拡大を図る考えだ。

またCFG傘下にある、マンチェスター、ニューヨーク、メルボルンとFマリノスで対抗戦を実施し、チーム強化とともにオフシーズンの興行収益を拡大することなども検討されている。

日産はクラブ運営への関与を薄める方向性を明確にしており、もくろみどおり、Fマリノスの事業拡大が進めば、投資を回収すべく、Fマリノスへの出資をさらに引き下げていくこともありそうだ。現在のJリーグの規約では、外国法人が過半数を出資することはできないものの、実質的にCFGがFマリノスの運営権を握る可能性もある。将来的には、Fマリノスのユニホームの胸から、「NISSAN」のロゴが消える日が来るかもしれない。

丸山 尚文 東洋経済 記者

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まるやま たかふみ / Takafumi Maruyama

個人向け株式投資雑誌『会社四季報プロ500』編集長。『週刊東洋経済』編集部、「東洋経済オンライン」編集長、通信、自動車業界担当などを経て現職

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