優秀なはずの上司の下で部下が育たない根本理由 部下に「責任感を持たせる」と生じる3つの変化
変化2 自分の信念よりも、自分のやるべきことを優先する
変化3 作業を小さくしたうえですべてやり遂げる
ここでは、1について詳しく紹介しよう。
ただ実行するだけでなく、学ぼうとする
実行(赤ワーク)の際には、仮説を立てて試すことが大切となる。仮説を立てるには、何をするかに加えて、何を学ぶかも決める必要がある。
仮説を立てると、人の思考心理は学習や改善に向かう。それにより、次にくる赤ワークの時間を、単に「作業をこなす」時間ではなく、「何かを学ぶ」時間としても受け止めるようになる。
青ワーク(思考)を終えて赤ワーク(実行)に戻るタイミングで、このような学習の機会が設定されると、将来的にさまざまなメリットがある。
まず、赤ワークそのものへの関心が強くなる。沈没した貨物船〈エルファロ〉の高級船員たちは、航海ルートの決定は船長の仕事であり、その変更について自分にできることはほとんどないと感じていたから、 風や海の状況にそれほど関心を向けなかった。
船の細かな位置取りに影響を及ぼすことができたかもしれないのに、未来の決断にとって重要な情報提供者になろうとしなかった。先のことを意識する感覚は、先のことを自分の手でコントロールできるという感覚によって強化される。
次に、最初から学習と改善の思考心理になっていれば、自分の力を証明するより、改善することを強く望むので、実行の赤ワークから思考の青ワークへ戻ろうとする意識が強くなる。
産業革命期のプレーブックでは、赤ワークは自らの働きを証明するものとされている。 自分が行っている作業を理解していることや、自分が生み出したものが正常に機能することを赤ワークで証明せよという。
だが、機敏で適応力や柔軟性に優れた組織を作りたいなら、求めるべきは「改善」だ。
ほかにも、学習を目的に掲げれば、失敗や遠回りへの嫌悪感が和らぐというメリットがある。要するに、学習という目的に集中すると、青ワーク(思考)から赤ワーク(実行)へ移行しやすくなるのだ。
皮肉な話だが、成果目標を掲げると、意外にも赤ワークにとりかかりづらくなる。本書で紹介した、青ワークにとらわれた女性、スーを思い出してほしい。彼女は話の蒸し返しや議論は率先して行うが、何かを始める責任をなかなか引き受けようとしない。
それは、青ワークに続く赤ワークの時間で、「証明」しなければならないと思っているからだ。「彼女の決断は正しかった」「彼女のチームならやり遂げられる」といったことを証明しなければならないとの思いが、彼女を尻込みさせているのだ。
だが、その赤ワークの時間を、学習する(予測を立て、起きたことを観察して検証し、予測を検証結果に照らして反省する)サイクルの一環だととらえるようにすれば、話を蒸し返すことから、行動を起こすことへ移行しやすくなるはずだ。
人は、学習モードになると行動を起こしやすくなり、挫折に遭うと耐性が鍛えられる。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら