他人を妬む人がいるのも仕方がない生物学的理由 進化してもイライラや孤独感は捨てられていない

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前項で述べたように、私たちの祖先は100人くらいの小集団で、一生共同生活をしていました。

もちろん夜も一緒に眠っていたにちがいありません。暗闇に乗じて猛獣が襲ってきたら、みんなで一致団結、戦って追い払ったのでしょう。

共同生活には、息苦しい面もあったのかもしれません。集団の掟を守らなければならないし、集団の中で期待される役割を果たす必要もあります。文明社会では、そういった集団のしがらみが嫌われたようで、個人で生活する傾向が強くなりました。

猛獣が襲ってくることもなくなったので、夜ひとりで眠っていても問題がなくなったのも、個人化傾向が強まった理由でしょう。

仲間が一緒にいない夜はとくに寂しく思う

しかし、心の働き方は、文明社会の個人化に順応できていません。依然として夜は危険であると感じるのです。猛獣がいないはずの暗闇に恐怖を感じると、そこに幽霊がいるなどの幻想を抱く人もいます。幽霊は「見知らぬ敵」であり、現代における危険な存在の象徴です。

『生物学的に、しょうがない!』(サンマーク出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

こうして、仲間が一緒にいない夜は、孤独を感じやすく、とくに寂しく思うものなのです。

孤独をやわらげる方策には、幽霊の幻想の代わりに、芸能人の幻想が役立ちます。好きな芸能人のポスターを貼って、夜一緒に寝ているところを想像するのです。すると、孤独感も解消できていきます。

しかし、この想像があまりに強くなると問題です。当の芸能人が結婚するという段になると、自分のパートナーが奪われる気がして、嫉妬を感じたりストーカー行為に及んだりしてしまうのです。適度に想像して、孤独感を防止しましょう。

ただ、夜はよしとしても昼も孤独なのは望ましくありません。私たちの心の働きの多くは、和気あいあいの協力集団向きになっています。これも狩猟採集時代の名残です。1日中人との交流がなければ、心の疾患を抱えやすくなります。

夜孤独なのはしょうがないとしても、昼の活動は仲間と一緒にわいわい楽しくしたいものです。

石川 幹人 明治大学 教授

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いしかわ まさと / Masato Ishikawa

1959年東京生まれ。東京工業大学理学部応用物理学科(生物物理学)卒。同大学院物理情報工学専攻,企業の研究所や政府系シンクタンクをへて,1997年に明治大学に赴任。人工知能技術を遺伝子情報処理に応用する研究で博士(工学)を取得。専門は認知科学で,生物学と脳科学と心理学の学際領域研究を長年手がけている。主な著書に『人はなぜだまされるのか~進化心理学が解き明かす「心」の不思議』(講談社ブルーバックス),『だまされ上手が生き残る~入門! 進化心理学』(光文社新書),『職場のざんねんな人図鑑』(技術評論社)がある。

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