「ペルー大統領選」投票10日経っても勝者不明の訳 ケイコ・フジモリ氏が選挙不正を訴えている
カスティジョ氏が地方の労働者層から支持を得る一方で、危機感を抱いたのが、都市部の富裕層である。社会主義政権の到来を恐れた右派系の政党がこぞってフジモリ氏を支持することを決め、これがフジモリ氏の追い上げにつながっていた。
フジモリ氏の父である、フジモリ元大統領が過去に犯した罪(汚職と人権侵害)によって、ペルーではアンチ・フジモリの動きが根強く存在していることから過去2回の大統領選挙でも支持を得られなかったフジモリ氏だが、今回はこれまでアンチだった層の一部がフジモリ派に寝返ったとみられている。
フジモリ元大統領が大統領選挙に臨んだときの対立候補で、今もアンチ・フジモリの急先鋒の1人である、マリオ・バルガス・リョサ氏も「ケイコ・フジモリ候補が勝利することを熱烈に望んでいる」と表明。現在スペインに在住しているバルガス・リョサ氏はその後ノーベル文学賞を受賞していることから、同氏がフジモリ氏を支持することに決めたことは、ペルーのメディアでも大々的に取り上げられた。
カスティジョ氏が就任した場合の経済政策は
フジモリ氏の支持者や、右派政党はカスティジョ氏の背後に前述のセロン氏がいることを懸念している。カスティジョ氏は選挙戦中に基幹産業の国営化はしない、憲法の改正もしないといったことを公言していたが、それがどこまで守られるか疑問視されている。
カスティジョ氏は選挙戦中、仮に勝利した場合の閣僚を誰にするのかということについて一切明らかにしなかったが、同氏の勝利を前にしてカスティジョ政権で経済を担当する人物が明らかにされた。
その人物とはペドロ・フランク氏というペルーカトリック大学の教授だ。フランク氏は左派系の若い政治家ベロニカ・メンドサ氏の経済顧問を務めており、同氏が率いる政党がカスティジョ氏を支持することに決めたことからフランク氏が新たな政権の経済を担うことになったとされる。
同氏がベネズエラの「エル・ナシオナル」紙の取材に対して、ベネズエラのマドゥロ政権とは関係がないことや、基幹産業の国営化、貨幣統制、資金の国外への流出を誘導するような言動はしない、といったことを明らかにしている。さらに、ペルー国立銀行の独立性も保ち、インフレに影響を与えないようにするとも述べている。
しかし、この発言が就任後、どれだけ守られるのか疑問視する向きもある。同氏がインタビューで明かした政策は、右派政権とほぼ変わらないからだ。そこで、注目されているのが、セロン氏がカスティジョ政権にどこまで影響を及ぼすか、だ。何しろ、ペドロ・フランク氏がインタビューで述べたことは、セロン氏の考えとは背反するからである。
選挙によって都市部の富裕層と地方の労働者層の分断があらわになったペルー。どちらの候補が勝っても国をまとめるのは容易ではないだろう。
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