70歳の池上彰がYouTuberデビューした納得の訳 発案からスタートまで2週間でチャンネル開設
池上:オレも緊急事態宣言があってから、大学の授業をZoomで行うようになり、これはいいアイデアだと思ったんだ。
メイン動画は台本なしでやっているけれど、Zoomホームルームはもっと即興でやる。Zoomの時間になったら、スタッフがそれぞれの場所からアクセスして、オレと増田さんがその日気になることは何かということをざっくばらんに話していく。
5分くらいで何を話すか決めて、すぐに撮り始める。長くても30分くらいかな。収録に参加している動画の校正者やスタッフから情報の間違いや表現について同時進行で確認してもらい、必要があればすぐに撮り直す。その場で、制作陣とタイトルの相談をして、だいたい1時間以内にはすべて終了。その後、スタッフが正式なタイトルを作成して、オレと増田さんがチェックしたものをアップする。
テレビとはまったく違う世界
増田:今までに動画は全部で約170本余アップしていますね(2021年5月現在)。最初に撮ったZoomホームルーム「河井夫妻逮捕の裏には安倍政権と検察の知られざる戦い⁉」では、ただただ、テレビと同様にニュースの解説を続ける池上さんに、私が「じゃあどうすればいいんですか?」と繰り返し聞いていますね。池上さんがなかなか自分の意見を言わない。いらいらしているのが画面越しに伝わってきます(苦笑)。
池上:今見ても、増田さんから突っ込まれて、オレがタジタジになっているのがわかるよね。長いこと、ニュースの解説ばかりをしてきたので、自分の意見を言うということに慣れていないんだよ。
増田:実はこういうやりとりは、動画の中でも外でもあって、私が遠慮会釈なく池上さんに対して突っ込むのは日常的なこと。視聴者の皆さんは、きっとハラハラしてご覧になっていたことでしょうね。スタッフだって最初はハラハラしていたんですから。そんな私の態度が批判されてしまったこともありました。
池上:ふだん、たとえばテレビではオレが解説をして、女性タレントあるいは女性アナウンサーが聞き役をするという構図が多いものだから、そのくせが抜けなかったんだよね。テレビとはまったく違う世界が新鮮だったな。コメント欄に、テレビと違って、増田さんがオレと対等にやりとりしている、という書き込みもあったよね。
増田:情報番組やニュース番組は、男性が解説して女性アナウンサーが「素直に受け止めて」聞き役に回る、というイメージが、視聴者にもしみついているのでしょうね。
池上:増田さんのツッコミがあるからこそ、予定調和にならず、ニュースのわかりづらいところがわかりやすくなるし、見ごたえあるものになっているんだと思うんだよね。今、あらゆる分野でジェンダー平等が言われるようになってきている。男性が解説し、女性が拝聴しながら頷くというのは、もはや前世紀の遺物という感じだよね。
これからは、男女で話をする場合でも、男性が過激なことを言ってあおったり、女性が過剰な反応をしたりするのではなく、真の意味で対等なスタンスで話し合うというスタイルが、いろんなところに広がっていくんじゃないかな。われわれは、その先頭を走っている、ということだ(笑)。