妻に過去の失態を蒸し返される夫が知らない心理 思い出すたびに傷つくから都度謝る必要がある
女性が、「とっさの体験返し」ができるのには理由がある。
女性の脳の中では、多くの体験記憶に、その体験記憶を脳にしまったときの感情(情動、気分などを含む)が付帯している。感情が第一検索キーのデータベースなのである。
このため、感情の逆引きができる。感情をトリガー(引き金)にして、過去の記憶を瞬時に引き出してこれるのだ。
街を歩いていて、「危険な匂い」を感じたら、同様の「危険な匂い」と共にある記憶を瞬時に引き出してきて身を守る。かつて、階段の滑り止めにハイヒールのかかとが引っかかって、怖い思いをしたことがある女性なら、大げさな滑り止めのある階段に差し掛かった瞬間に、ほぼ無意識にその記憶を取り出して、自然に手すりのわきを行く。子育て遂行のために女性脳に搭載された、危機回避能力の1つである。
感情キー型記憶データベースのおかげで、女たちは、とっさに自分や幼子の身を守れるし、冒頭の対話例のように、友人の悲しみを優しく包み込むことができる。母性の源と言っても過言ではない。
何十年も前のことを今起こったかのように
しかしながら、この感情トリガー、男性から見たら、深刻な副作用がある。何十年も前のことを、今起こったことのように言われる。それを何度でも繰り返される。
私の父は、私が生まれたときの一件を、事あるごとに言われ続けていた。12月半ばに帝王切開で私を出産した母は、姑に「本家の嫁が正月に寝込んでいるなんて」と皮肉を言われて、正月に台所に立ったのである。
このとき、夫である父は、当然、庇うべきだった。なのに、「お産は病気じゃないからな」と言ってしまったのだ。出産してわずか2週間である。私は、遠く九州の実家に帰れず、極寒の信州で台所に立った母を思うと、今でも涙がこぼれる。タイムマシンで駆けつけて、手伝ってあげたいくらいだ。結局、母は高熱を出して倒れ、助産師さんに「産褥熱は命を落とすこともある」と怒鳴られて、父は震え上がったそうだ。
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