保育園で幼児に「プログラミング教育」の深い訳 現代の基礎教養に幼少期から触れるメリット
またプログラミングを体験することで、プログラミングが何か、コンピューターが何かを理解でき、日々の生活の中でプログラミングがどういうところに活用されているのかがわかるのも大きいという。駅の自動改札や信号機、お風呂の湯沸かし器など、身近な電子機器がどのような命令によって成り立っているのかを、子どもと一緒に考えると、仕組みへの理解も深まる。
さらに石戸氏は「私たちは、日常的に問題を解くための手順を考えている。今まで習慣化していたアルゴリズムをもう一度考え直すと、実はもっと効率的で、ミスの少ない方法が見つかるかもしれない」と、普段の生活にプログラミング思考を取り入れてみること、また幼少期にコンピューターを実際に使って体験してみることも勧めている。
ただ、あくまでプログラミングやコンピューターは、自分のやりたい目的を達成するための手段やツール。コンピューターやプログラミングに興味はないが、絵を描くことやものをつくること、音楽を奏でることが好きな子には、プログラミングで自分の絵を動かしたり、3Dプリンターで立体物をつくったり、専門的な知識を学ばなくても作曲体験ができるといった自分の好きなことを探究するためにプログラミングが役立つことを知ってほしい。
「プログラミングで大事なことは、それを使って、何を表現し、何を創造するかです。子どもたちにはプログラミングと併せて、五感を使ってたくさんの経験をする中で、豊かな感性や発想力を育んでほしいと思います。何より、子どもにとって、自分で指示したとおりに動かせた感動は大きく、学びのモチベーションにつながります。知識も大事ですが体験に勝るものはありません」(石戸氏)
小学校でプログラミングが必修化されたことに加え、保育園でもプログラミング教育を導入するところが出てきた。プログラミングが学べる玩具やアプリ、教室のほか、地域のボランティアによる無料の学びの場、夏休みや冬休みにのみ開講されるプログラミングキャンプ、週末に参加できる単発のワークショップなど多様で発展的な学びの場も増えているという。
石戸氏は「年齢に応じて適切な学びのツールや環境を選び、それらを活用してまずはやってみること。どの教材や環境が適しているかは子どもによって違うため、子どもに合った学びの場を探ることが大事。もはやすべての人の基礎教養となったプログラミングですから、親が社会の変化を受け入れ、共に学び続ける姿勢を見せることは、子どもにとって大きな刺激となる」と親子で共に学ぶことも提案する。
幼少期や小学校においては、プログラミング言語でコーディングを学ぶことを目的としていない。あくまで自分の頭で考えて効率のよい方法を見いだしたり、アイデアをかたちにするプログラミング思考を鍛えることを目指す。プログラミングは、今や将来にわたって必要とされる学びだ。学ぶには早すぎる、また大人になってから学ぶのにも遅すぎるということはなさそうだ。
(注記のない写真は尾形文繁撮影)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら