宣言中も「キャンセル少ない」ホテル各社の変化 GW消滅に嘆く旅行会社、テーマパークとの差

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こうした環境変化の背景には、消費者のマインドの変化がある。昨年の4~5月の宣言中は国や自治体のコロナ対策も手探りで、消費者は「旅行に行く」という選択肢をほぼ持てなかった。だが、1~3月の宣言中には「自粛の意識が緩くなってきている」「春休みは絶対に泊まる、と意気込むリピーターもいる」(ホテル関係者)といった声も聞かれた。

星野リゾートの星野佳路代表も「予約数はこれまで新規感染者数と完全に相関関係があったが、4月前後から変わってきた」と指摘する。

また、「1~3月の宣言では飲食店中心の対策が示されたため、旅行やホテルに対する意識が変わるきっかけになった」(業界幹部)との見方もある。実際、多くのホテルが消毒などの対策に加え、部屋食のプランの拡充など、客やスタッフと接触を抑える工夫を重ねてきた。

近場のホテルにマイカーで移動し、家族単位で宿泊・食事を楽しむ分には感染リスクも少ない――。そう考える客が増えているのだろう。

ホテル、ニューグランドの原信造社長は「危機の時には行ったことのない高級ホテルより、自分がよく知っていて安心できるとか、優しいとか、そういう基準で行き先を選ぶ傾向が強まる」と分析する。宣言発出で自粛が要請され、GoToの大幅な割引もない状況では、普段から地元の客や会員などのリピーターを取り込めているかが問われるようだ。

ホテルに泊まる「理由作り」で知恵を絞る

業界全体を見れば、厳しい状況が続いているのは間違いない。観光庁の調査では、全国の宿泊数は1月が1728万人泊(前年同月比59%減)、2月も1763万人泊(同52%減)だった(人泊数=宿泊人数×宿泊数。2人で1泊すれば2人泊)。3月は2726万人泊(同13%増)と多少回復したが、春休みシーズンとしては厳しい水準だった。

ただし、「感染リスクを低く抑え、快適に過ごせる」という認識が利用者に広まれば、コロナ禍でも宿泊需要は底打ちとなる可能性がある。盛大に旅行を楽しむわけにはいかないこの時期、客を取り込むにはホテルに泊まる理由を作り続けることが重要だ。

ホテルニューオータニ(東京)は今回の宣言中、1479室の全客室でルームサービスの食事・ドリンクを大幅に拡大する「スーパールームサービス」を行っている。料理は120種、ドリンクは300種に及び、ソムリエやバーテンダーが客室に出張する。多くの飲食店が休業する中、「密を避け、客室でゆっくり過ごす」ニーズをとらえる取り組みだ。

プリンスホテルも、全国各地で「館内利用券3000円付きプラン」など県民限定のプランを用意。「近場の旅」消費を喚起している。

昨年来、シーズンというシーズンを潰されてきたホテル業界。だが、ワクチン接種が進み感染者数が落ち着けば、いずれGoToトラベルの再開も視野に入ってくる。今後は感染対策の守りだけでなく、攻めの提案力が問われる局面に入りそうだ。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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