フィリピンは中国の膨張にどう対抗するか バナナが取り持つ日本との強力な友好関係

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――中国は2年前、フィリピンからのバナナの検疫基準を厳格化し、一時的に事実上の輸入制限を実施した。これは南シナ海での紛争の「報復」と見られていますが、影響はどうでしたか。

当初は経済的に大きな打撃を受けたが、新規市場の開拓に努め、輸出量を増加させました。とりわけ中東に対する輸出量が急増し、その他の国にもフィリピンバナナの品質の確かさや美味しさが知れ渡るようになりました(注、JETRO資料によると2008年→2013年の輸出金額がUAE向けは1116万ドル→7896万ドル、サウジアラビア向けは407万ドル→2640万ドル、クウェート向けは211万ドル→2376万ドルと急増している)

――日本でも当時、「フィリピンの美味しいバナナを食べて、フィリピンを助けよう」との運動が起こりました。

友好国である日本には、心から感謝しています。あの一件で、日本におけるフィリピンバナナのシェアは一気に上昇しました。今でも日本は最大の輸出先です。

同時に、フィリピンと日本の親善関係は、ますます強くなっています。6月にはアキノ大統領が来日して安倍晋三首相と会談し、安全保障と経済の両面で「戦略的パートナーシップ」を強化すること、および南シナ海の紛争の解決について「法の支配」が重要であることを確認しました。

安倍政権の積極的平和主義を支持

「日本が巡視船10隻を提供してくれたことに感謝している」

――安倍首相が掲げる積極的平和主義に対し、フィリピンはいち早く賛同の意を表明しました。

 

はい、フィリピンをはじめアジアの多くの国が積極的平和主義に賛同しています。日本はアジア諸国に援助を続けることでアジアの平和と発展に大きく寄与しており、この地域において、なくてはならない存在です。よき隣人として確固たる信頼関係が醸成されており、日本がフィリピンに対して巡視船10隻を提供してくれるのもそのひとつの表れ。我が国は広い海域を持つため、海洋警備をする上でとても有難いことです。

今やアジア諸国は経済的に目覚ましい発展をとげており、2015年にはASEAN経済共同体が誕生します。アジアに巨大な経済共同体が誕生すると、中国の相対的なパワーが小さくなるはずです。

――ASEAN経済共同体が発足することで、アジアがダイナミックに変わるかもしれません。

我々としてはASEAN共同体に中国も取り込みたい。アジア諸国の中には中国に近い国が多く、対立は好ましくありません。むしろ中国を効果的に取り込むことができれば、経済的に共存共栄関係が生まれ、軍事的にも中国が野心のままに勝手なことができなくなります。

我々はアジアの平和と繁栄を心から願っています。そういう意味で、南シナ海の問題について中国と武力衝突を起こすべきではない。それよりも愛情と友情、そして正義でもって闘い、勝ち抜いていく。それが平和国家であるフィリピンらしいやり方なのです。

(撮影:梅谷秀司)

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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