リニア反対でダムに甘い、静岡知事の「2重基準」 知事選出馬の川勝氏に静岡市長が異例の意見書

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水利権更新が行われていない大井川源流部・二軒小屋発電所。左は西俣川。県の自然環境保護調査員は付近のヤマトイワナを調査中(筆者撮影)
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大井川源流部にある中部電力の二軒小屋発電所(最大使用水量毎秒11立方m)、赤石沢発電所(同7立方m)が国の水利権許可更新が認められないまま稼働を続けている問題で、田辺信宏静岡市長が「(国の許可に当たって)南アルプスユネスコエコパークへの配慮が必要」などとする異例の意見書を川勝平太静岡県知事宛に送ったことがわかった。

川勝知事は4月13日、リニア問題を争点に6月3日告示の知事選(20日投開票)へ4期目の出馬表明をしたばかり。リニア問題では「世界の宝である南アルプスエコパーク保全は国際公約」などと再三、述べる知事に、ダムの自然環境へ与える影響こそ大井川最大の水問題と指摘する意見も多く、田辺市長は、知事選を前に痛烈な“牽制球”を川勝知事に向かって投げたようだ。

ヤマトイワナが絶滅の危機に

JR東海のリニア南アルプストンネル計画で、湧水の減少による影響を議論する静岡県生物多様性専門部会は、絶滅危惧種ヤマトイワナ(サケ目サケ科イワナ属)保全を最大の焦点にしてきた。ヤマトイワナは、全長30cm前後、日本固有種で全国に生息するが、南アルプス地域だけでなく、各地で養殖したニッコウイワナが放流されたため、交雑が進み、純粋のヤマトイワナは絶滅の危機に追い込まれている。

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ヤマトイワナが生息するとされる大井川支流の西俣川と東俣川(大井川本流で西俣川分岐からの呼称)に西俣えん堤(えん堤は高さ15m以下の小規模ダム)、東俣えん堤を設置、導水路を使って発電を行う二軒小屋発電所、また、ヤマトイワナの宝庫とされる赤石沢に聖沢えん堤、赤石沢えん堤を設置する赤石沢発電所は、いずれも2019年3月末で水利権使用許可期限が切れているが、いまだに、国の許可は得られていない。

昨年11月になって、国はようやく河川法に基づく知事意見を求める手続きを行った。静岡県は知事意見を国に提出する前段階として、ことし1月、静岡市に意見照会を行っていた。

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