1人1台時代「合法オンライン授業」の作り方 補償金制度が「激安サブスク」といえる理由

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例えば、コロナ禍の臨時休校中、教員が学校の教室からZoomなどを使って自宅にいる児童生徒に対して、他人の著作物を使った教材でオンライン授業を行った学校があった。こうした「リアルタイム・スタジオ型公衆送信」の場合、許諾は不要だが補償金は必要になる。一方、他校との遠隔合同授業は、改正前と同様に無許諾・無償とされている。

幼稚園や保育所で対面で行っている絵本の読み聞かせを、臨時休園中に在宅オンライン授業として行う場合は無許諾・有償。しかし、絵本の読み聞かせ動画をクラウドサーバーにアップロードし、幼児が自宅からいつでも視聴できるような場合は、要許諾となる。

芳賀高洋(はが・たかひろ)
岐阜聖徳学園大学教育学部教授。前職はお茶の水女子大学附属中学校教諭。専門は情報倫理学、デジタル・シティズンシップ教育、プログラミング学習、ICT教育利活用など。「著作物の教育利用に関する関係者フォーラム」専門委員および初等中等教育専門WG幹事(2021年度主査)
(写真:芳賀高洋氏提供)

「今回、こうした細かい典型事例を40程度載せていますが、実際の事例は無限にあるため網羅しきれていません。1つの事例を文章化するだけでも、話し合いに数カ月も時間を要しました。それだけ法律の解釈や著作権に対する考え方は人それぞれだということ。運用指針に異論のある著作権者もいるかもしれません。われわれもこれが最終的な結論や唯一の答えではないと思っており、今後も追記改訂する予定です。

よって、運用指針どおりに利用すれば安心というものではなく、逆に記載がないから『これはダメ』と萎縮しないでいただきたい。あくまでもガイドラインと捉え、著作権に配慮した授業の進行や教材作りを、主体的に考えるヒントとして活用していただけると幸いです。

今や小さい子どもでもクリエーターになり、情報発信する時代。面倒に思われるかもしれませんが、クリエーターに敬意を表する姿勢こそ子どもたちに示すべき模範であり、教育者としてあるべき姿ではないでしょうか。また、著作権法が改正されるたびに解釈が難しくなっており、その問題解決は、司法の場だけでなく経済学や哲学、情報倫理学など複数の学問領域に関係しています。今後もディスカッションを重ねていくべき問題であり、改めて教員の皆様に一緒に考えていただきたいです」

GIGAスクール構想で情報端末を整備することで精いっぱいだった教育現場も多いかもしれないが、情報端末の活用が本格化する今こそ、その質の向上と著作権者の権利保護とのバランスを考慮した著作物利用について、当事者として考えるべき時ではないだろうか。

(注記のない写真は岐阜聖徳学園大学附属小学校提供)

制作:東洋経済education × ICT編集チーム

東洋経済education × ICT

小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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