「精神疾患」発症する人の7割が25歳以下の現実 若い世代への教育や啓発が求められている
――精神疾患の患者さんはなかなか病院を受診しないそうですね。
日本は国民皆保険制度が充実していて、誰もがどこにいても多額の費用を負担することなく医療サービスを受けることができますよね。だからちょっと腰が痛いとか、風邪を引いたとか、おとなしく寝ていたほうがよくなるのではないかと思うような場合でも、「とにかく病院で診てもらおう」という人が多い。それなのに精神疾患は不調を感じていてもなかなか病院を受診しません。
外来で初診の患者さんを診察すると、だいぶ前から悪かったであろう人はたくさんいます。私だけでなく多くの精神科医が、そう感じているのではないでしょうか。
精神疾患を発症してから受診にいたるまでの期間を「DUP(Duration of Untreated Psychosis: 精神病未治療期間)」と言いますが、なかなか受診に至らない状況はそのデータにも表れています。
精神疾患の中でも若い世代で発症しやすい代表格ともいえる統合失調症のDUPは、中央値で5~6カ月。DUPははっきりと症状が出て病気だと自覚した時期からカウントしていますが、実はそれ以前から眠れない、イライラが続くなど、ちょっとした症状が出ている場合が少なくありません。つまりかなり長い期間にわたって治療を受けないまま、病気が見過ごされていることになります。
とりあえず放置してしまう
――なぜ受診に至らないのでしょう。
ふだん私たちは鼻水や咳が出れば風邪のひき始めかな、熱が高ければもしかしたらインフルエンザかもなどと気づいて、安静にしたり病院を受診したりしますよね。風邪の症状はよく知られていますし、みんな経験したことがあるから、症状が出たときにどう行動すればいいか判断できるのです。
精神疾患の症状は本人にわかりにくい場合が多いのですが、わからないわけではないんです。本人は何か変だと気づいていて、周囲も普段と違うと感じている。でも精神疾患のことをよく知らないから、その不調が精神疾患からきているものだと結び付けることができない。どう行動すればいいかわからないからとりあえず放置してしまって、なかなか受診につながらないのです。