膨大なユーザーを擁するショート動画アプリの運営会社が、コンテンツのガバナンスに苦慮している。中国のユーザー数が6億人を超えるショート動画アプリ「抖音(ドウイン)」は3月1日、アプリ上で展開されるコンテンツや電子商取引(EC)の違反行為に関するポリシーを改定した。
(訳注:抖音は世界的な人気アプリTikTok[ティックトック]の中国国内版。北京に本拠を置く字節跳動科技[バイトダンス]が運営している)
注目すべきなのは、ユーザーが自分の裕福さをひけらかす「炫富(シエンフー)」と呼ばれる行為が、コンテンツ関連の違反項目に追加されたことだ。抖音のセキュリティーセンターは、年初からの2カ月弱の間に炫富を含む合計2862本の動画コンテンツ、324本の音声コンテンツ、47のハッシュタグを削除。関係する3973のアカウントを処罰・閉鎖したという。
炫富の違反コンテンツは、具体的にはどんなものなのか。抖音は事例として、①拝金主義をあおったり、他者と比較して自慢したり、(視聴者に)一攫千金の幻想を抱かせたりするなど、好ましくないライフスタイルや価値観を含むもの、②自分の優位性や社会的地位を不適切にひけらかし、非富裕層を差別、嘲笑、攻撃する内容を含むもの、③未成年者が大量の贅沢品の情報を流布したり、その他の不適切な富のひけらかし行為や言動に及ぶこと、などを列挙した。
背景に中国政府のコンテンツ管理強化
これらの違反行為に対し、抖音は今後も長期継続して取り締まり、規定に基づく厳しい処分を取るとしている。だが、財新記者が抖音のサービス利用規約を確認したところ、ユーザーの行動規範を定めた項目のなかで炫富に関する判断基準は明確には示されていなかった。
抖音のポリシー改定の背景には、中国政府が求めるコンテンツ管理の強化がある。2月9日、国家インターネット情報弁公室や全国「掃黄打非(ポルノ・違法情報取り締まり)」工作小組弁公室など7部門が共同で新たなガイダンスを発表。アプリの運営会社に対し、ユーザーの行為の適切な管理を強化するよう促した。
だが抖音にとって、6億人を超えるユーザーを有効に管理するのは簡単なことではない。
全国「掃黄打非」工作小組弁公室の窓口には、2020年に抖音のわいせつコンテンツに関する通報が900件以上も寄せられた。これを受けて同弁公室は今年1月8日、「抖音の責任者を召喚し、最高水準の行政処分を課す」と表明していた。
(財新記者:関聡)
※原文の配信は3月5日
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