発達障害でも「要領がいい人」「悪い人」の境界 当事者と医者が語る「要領をよくする」コツ
F太:仕事がうまくいかない人に僕がまず勧めているのは、手順書を作ること。世の中にはマニュアル化されていない仕事が多いのに、上司からは「自分で考えろ」と言われますよね。なにから手をつければいいか迷っているうちに別の仕事もお願いされたりして、頭がパニックになってしまう。
やるべきタスクと手順を全部書き出すことで、自分の中にマニュアルができます。あとはそれどおりに繰り返していけば、スポーツと同じで徐々に体が覚えてくれる。慣れてきたら、よりよい進め方に最適化していく余裕も生まれます。
樺沢:書き出すことは大切ですね。とくに手順書やTO DOリストはゲーム化しやすいです。タスクが終わったら1行ずつ消していって、1日の最後にはコンプリート、という感じで。私は繰り出し式の太めの赤鉛筆でタスクを思いっきり消します。スッキリしておすすめですよ。
小鳥遊:私もTO DOリストを消すことに快感を覚えるようになりました(笑)。タスクのほかにも書き出したほうがいいことはありますか?
嫌なことも1回だけ書き出して、忘れる
樺沢:悩んだときや嫌なことがあったときも効果的です。たとえば上司に怒られて落ち込んだら、そのときの感情をすべて細かく書き出す。大事なのは、1回だけ書き出すこと。何度もアウトプットすると記憶が強化されて忘れられなくなってしまいます。
タスクの書き出しも悩みの書き出しも、脳の「ワーキングメモリー」と呼ばれる作業スペースを空ける目的があります。なにかを覚えている状態は、それだけ脳のキャパシティを使っているということなので、今やるべきことに全力を発揮できなくなるんですね。「書いたら忘れる」というのを日頃から習慣化しておくと、脳を効率的に使えるようになります。
小鳥遊:ミスをしてしまったら内容だけでなく防止策まで書くようにしていますが、そうすると安心できる気がします。
樺沢:それは「フィードバック」と呼ばれる作業。自分のアウトプットのよかった点と悪かった点、ミスを繰り返さないためにどうするかを書き出すことで、行動が方向修正されて成長につながります。なにかに悩んだとき、「事実」は書き出してフィードバック作業、「感情」は書き出して忘れる、というように切り離して対処することが大切ですね。