金儲けがうまい人に知ってほしい「伝説の講演」 思想家・内村鑑三が若者に説いた言葉の重み

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それは、神学生が増えることよりも大事なことです。キリスト教信者の中に神学生が10人いたとしても、実業家はひとりもいません。キリスト教信者が100人いても実業家はその中にひとりもいない。1000人いて、やっとひとりいるかどうかです。財産を築き、神と国のために尽くそうという正しく清らかな考えを持つ青年がいないのです。

紀伊国屋文左衛門は百万両をもうけて、その百万両を自分のために使ってみたいと思って財産を築いたそうですが、そういういやしい考えを持たず、百万両の財産を築いたら、それを神のために使ってみようと思うような実業家になりたいものです。そして、そういう実業家がいてほしいものです。その願いはとても清らかな願いだと思います。

残念ながらそのように財産を築く才能は私にはないので、もしみなさんの中にそういう願いを持っている人がいるなら、神が自分に命じた考えなのだと思って、そのことを励みにがんばってほしいと思います。

そして教育に従事する人は、「お金をもうけるのはいやしいことだ」などと言って、事業をする人の足を引張らないでほしいのです。あるアメリカのお金持ちが「私はお前にこのお金を遺すが、この中に汚いお金は一銭もない」と言って子どもに遺産を遺したそうですが、私たちにはそういうお金が必要なのです。

財産を築けるのは限られた天才だけ

後世に遺すもので、一番大事なものはお金であり、お金がいかに必要かをお話ししてきました。しかし、財産を築けるのは限られた人、天才だけです。残念ながら私は天才ではありません。お金もうけの才能がある人は、耳たぶが分厚くたれ下がっているらしいのですが、鏡を見ると、私の耳たぶは小さいので、やはり私にはその才能はないようです(笑)。

私のかつての生徒でも、お金もうけの才能のある人がいました。その人は無一文で北海道に左遷されたのに、今では、私の10倍くらいはお金があるようです。「私がお金に困ったら助けてくれ」と言っておきました。

誰もがお金をもうけられるわけではありません。さまざまな職業と同じで、お金をもうけることが天職という人がいるものです。けれども、お金を有効に使えない人がお金もうけをすると、とても汚らわしく見えます。

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