埼玉の弁護士はなぜ株主提案に踏み切ったのか ラクオリア創薬に経営陣の大幅刷新を求める
異例の株主提案の理由
――個人株主による株主提案は日本では異例のことです。株主提案に至った経緯や理由などを聞かせてください。
柿沼 私がラクオリア創薬に投資したのは、2017年1月ごろのこと。同年7月に、業界紙の報道で谷社長が「直近で200億円の時価総額を、2020年ごろまでに1000億円を目指す。2019年に黒字化を狙うが、黒字転換は通過点」と話しているのを知った。
当時のラクオリアの開発パイプライン(新薬候補群)は非常に魅力的だった。消化器薬の「テゴプラザン」や動物薬の「ガリプラント」(いずれも2017年以降に承認・発売)に加えて、独自のイオンチャネル創薬群(細胞膜にある膜たんぱく質の一種で、生体内で重要な働きをするイオンチャネルを標的にした医薬品)もあった。うまくいけば、時価総額1000億円は達成できると思っていた。
だが、説明会資料に目を通し、株主総会や個人投資家向けセミナーに足を運ぶうちに、会社のやり方に疑問を感じることが多くなってきた。
――疑問とは?
柿沼 (医薬品開発をするために)ラクオリアの新規化合物の薬効評価をしていた武田薬品工業が、2018年にその化合物の評価をやめた。ラクオリアの経営陣は「非常に有力なものなので開発には自信がある」と強気の姿勢だったが、その後、この開発が進捗しているようには見えない。
2018年1月に発表した中国の製薬企業ZTEとの医薬品共同開発をする合弁会社設立も、(米中対立のさなかでも)「問題はない」という回答だった。谷社長は「どんな形でもスキームを生かして合弁はやっていく」と説明していたが、同年10月には合弁解消を発表した。
業績は、2019年12月期は営業赤字。続く2020年12月期も当初は大丈夫だと言っていたのに、二度にわたって業績を下方修正した。「営業黒字の必達」という株主との約束は2年連続で反故にされてしまった。
(同業の)アンジェスが新型コロナワクチンで頑張っているのに、ラクオリアには新型コロナ関連の開発の動きもない。6月ごろになると、私の運営するブログにラクオリアの株主から、「なんで柿沼は動かないんだ」という声さえ届く始末だ。
埼玉の弁護士が「異例の株主提案」に踏み切る事情
インタビュー/柿沼佑一弁護士「きちんと経営できればラクオリアは飛躍する」
インタビュー/ラクオリア創薬「製薬会社はそんなに甘い商売ではない」
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