宇都宮LRT、新幹線…「新線工事」はなぜ遅れるか 延期は仕方ないが、問題は「その後の対応」だ
そのほか、建築需要の増加を背景とした現場管理費などの増加や物価上昇、豪雨災害対策の強化などで39億円の増加。さらに、安全対策やバリアフリー対策の強化、利便性の向上など社会情勢やニーズの変化に対応するため48億円の増加となった。軌道構造の見直しで28億円のコストダウンを行ったが、差し引き226億円の増加である。
前述の相鉄・JR直通線でも事業費は当初計画から42%、相鉄・東急直通線は49%増加している。とくに地下の地質や埋設物に関しては、着工してからでないとわからない点も多く、芳賀・宇都宮LRTの場合は国内初となる新設LRT路線であるから、ノウハウが不足していたという側面も大きいだろう。
やむをえない面があったとはいえ、宇都宮市の佐藤栄一市長は昨年11月の市長選でLRT事業の凍結を掲げる対立候補を破って5選を果たした経緯がある。市長は1月になって報告を受けたと説明するが、開業延期と事業費の大幅な増額は、選挙という重要な意思決定の機会の前に開示されるべきであった。
北陸新幹線工事の「負のスパイラル」
では、北陸新幹線についてはどうだろう。こちらも工事の遅れについては情状酌量の余地がある。着工当時は2025年度開業予定だったのを、2015年に政府・与党の整備新幹線検討委員会が3年前倒しを決めた経緯があり、もともと工期に無理があったのではないかという指摘はもっともだ。
国交省の中間報告書でも、2019年度に実施した入札において不調・不落が頻発することとなり、工期遅延を回避するため、積算単価に実勢価格を反映させた結果、発注金額が増額したことや、用地測量・買収が遅れた工区の工期を短縮するために、地域外から労働者や資機材を導入するなどの急速施工を行ったことで工事費が一層増えた経緯などが記されており、工期の遅延と事業費の増大が負のスパイラルに陥っていくさまが見えてくる。
しかし、ここで最大の問題となるのが、こうした状況をコントロールすべき立場の機能不全であった。
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