ビートルズとアップルの知られざる意外な関係 かつては社名をめぐって法廷闘争も行われた

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例えば、旧約聖書で史上初めての人間とされるアダムとイヴゆかりの果物にあやかったという説などがそれにあたる。また、リンゴ・スターのファースト・ネームが日本語でappleを意味する言葉だからという珍説まで存在するが、さすがにそれは無理がある気もする。

ジョンとポールはリンゴに思い入れがあった?

ただ、とくにジョンとポールにとって、リンゴという果物には特別な思い入れがあったのではないかと小島氏は推測しているそうで、その考え方を立証するものとして、リンゴについてのジョンのエピソードを引いている。

ヨーコと緊密な関係になる前のことだ。友人に勧められてヨーコの個展を訪れたジョンは、テーブルの上にリンゴがポツンと乗せられたユニークな作品を見つける。そして何を思ったか、彼はいきなりそのリンゴにかぶりついてしまったのだ。そんな行為に、当然ながらヨーコは唖然としたが、同時にジョン・レノンという人物を強く印象づける結果になった。この時のことをのちに、「目の前に食べるものがあれば、口に入れるというのは自然な行為でしょう。そんな当たり前のことが自然にできる人なんだと思った」と彼女は回想している。ジョンのその行為には、自然体でアピールする何かがあったということだろう。ちなみにこの時期、ヨーコはビートルズについて、ほとんど何も知らなかったらしい。(40〜41ページより)

ちなみにジョンがヨーコにひかれたきっかけは、彼女の個展で「天井の絵」という作品を見たことがきっかけだったといわれている。キャンバスが天井に取りつけられており、はしごを登って虫眼鏡でのぞくと“YES”と書かれていることがわかるという仕掛けになっているもの。はしごを登ってそれを確認したジョンは、その肯定感に心を打たれたというのだ。

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しかしその前段階に、ジョンがリンゴをかじるという“事件”が起きていた。そういう意味では、リンゴが2人の仲を取り持ったと考えることもできるわけだ。

またポールにとっても、リンゴは特別なものだったようだ。アップルのマークにはリンゴが用いられているが、それはポールが所有していたルネ・マグリットの『青いリンゴ』という絵画がもとになっていたというのである。

言うまでもなくマグリットは、ベルギーのシュールレアリズム画家。ポールはそれを鑑賞するうちにリンゴを意識するようになり、それが社名を決める際にも影響を及ぼしたのではないかと小島氏は推測しているのだ。どうとでも考えられることだとはいえ、こうして思いを巡らせるのは楽しいことでもある。

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