アメリカ「ワクチン予約大量キャンセル」の真相

ワクチン配布の混乱ぶりはあぜんとするほどだ

現在、アメリカ各地で起こっている深刻なワクチン不足の原因は、どうやら配布体制にある。接種対象を65歳以上に拡大する州が増え、さらに需要が高まってくることも考え合わせると、問題はまだ何週間と続く恐れがあると当局は警告している。

バイデン政権は各州へのワクチン配布体制を全面的に見直すと公約。ワクチン供給を増やすべく国防生産法まで発動した。しかし、製造拠点はすでに能力の限界に達しており、ワクチン不足が短期間で解消することはないと専門家は指摘する。

「5人分の量を6人に」のケチケチ作戦

そんななか、州・地方自治体、病院は自力で解決策を見いださなければならない状態となっている。ヒューストンの医療機関ハリス・ヘルスシステムの最高経営責任者(CEO)のエスマイル・ポルサ医師は、ワクチン配布が減少したため、5回分の量のワクチンで6回分の接種をまかない、急場をしのいでいるという。同院は主に無保険の患者を数千人抱えている。

テキサス州の混乱はこれにとどまらない。共和党に所属する同州のグレッグ・アボット知事は、民主党の市・郡関係者の参加を禁じたヒューストンの会合で自州のワクチン接種を自賛。しかし、そのわずか数日後、同じく共和党に所属するダン・パトリック副知事がワクチン配布に関する同州の専門家委員会宛てに問題解決を求める書簡を送付した。

「多くの市と郡では、ワクチン接種が可能になったとの発表がなされるやウェブサイトの申し込みページがクラッシュし、電話回線がパンクする状況になっている」とパトリック氏は書簡で指摘した。「行列と混乱、不満を軽減するためには、誰もが接種を受けられるようになるのにどれくらいの時間がかかるのか、住民にわかりやすく情報を伝える必要がある」。

ワクチン配布をめぐる混乱はテキサス州だけでなく、さまざまな州に広がっている。これが浮き彫りになっているのは、連邦レベルの対策不足だ。アメリカのワクチン接種計画にはトランプ前政権の下で巨大な空白が生じており、各地の担当者はその空白を埋めるのに大わらわとなっている。

カリフォルニア大学サンフランシスコ校の疫学者ジョージ・ラザフォード教授によれば、サンフランシスコ地域における問題は明白だ。「ワクチンの量が足りない。これに尽きる」。

ワクチンの配布量が予定に届かなかったことで、サンフランシスコ市の保健当局と病院には「衝撃が走った」とラザフォード氏は話す。おまけに接種対象が65歳以上に拡大され、現場の負荷は一段と増す見通しとなっている。「在庫の残りを正確に把握し、問題に的確に対処するのは、市にとっては荷が重すぎる」。

サンフランシスコ市保健局のグラント・コルファックス部長は、同市のワクチンは「在庫切れ寸前」の状態にあるとし、全国的な調整不足がワクチン配布の混乱をまねいたと指摘した。

「連邦レベルの調整不足が今も尾を引いている、というのが実態だろう」とコルファックス氏は語った。「要するに、コロナ対応が市と郡に丸投げされてきた影響だ」。

(執筆:Simon Romero記者、Giulia McDonnell Nieto del Rio記者)
(C)2020 The New York Times News Services

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