その男、凶暴につき ヤバイ日本建設大綱<上> 猪子寿之・チームラボ社長に聞く

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高級紙「ル・モンド」が絶賛し、たまたま、パリを訪れていたタワーズワトソンの淡輪も、実物を見て圧倒された。「猪子は天才。世界トップ級の頭脳の可能性がある」。同時に、半ば本気で心配している。「天才だから飛びすぎている。隠しておきたかった。世間に露出させることが、いいことなのか悪いことなのか」。

ないない尽くしの“構造” 夏休みの自由研究

猪子のどこがヤバイのか。猪子は言う。「事業とか経営とか、あんまり考えてないんですよ、正直言うと」。謙遜のようで、謙遜でない。

猪子によれば、経営学ももろもろの戦略論も、すべて情報化社会以前に構築されたコンセプトだ。ゆえに賞味期限が切れている。なぜか。

情報化以前は、売るためには、消費者に商品を知ってもらうこと、大型店舗に商品を置いてもらうことに最大のプライオリティがあった。だから、企業はマーケティング戦略を練り、マスコミを使ってマスプロモーションを打った。が、ネットですべてが変わった。「今って、誰でも超一瞬で情報を獲得できるじゃないですか。何かヤバイもの作ったら、勝つんです。超ヤバイものを作ったら、勝手に流通するんです」。

電通もマッキンゼーも必要ない。セールスマンもホワイカラーもいらない。「役員なんて価値がない。経営、戦略も関係なし」。唯一重要なのは、超ヤバイものを作ること。それができるのはテクノロジー(情報技術)とクリエーティビティ(文化的創造性)=手の動く専門人だ。

「ヤバイものって、細部の集合じゃないですか。役員とか戦略とか、大ざっぱな話では、細部は作れない」

売り上げ20億円。収支はトントン程度だが、社員200人のチームラボには、自社営業マンがいない。売り上げ計画も利益計画もない。役員会は一度も開かれたことがない。
■[中]に続く=敬称略=

(撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2010年4月10日号)

梅沢 正邦 経済ジャーナリスト

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うめざわ まさくに / Masakuni Umezawa

1949年生まれ。1971年東京大学経済学部卒業。東洋経済新報社に入社し、編集局記者として流通業、プラント・造船・航空機、通信・エレクトロニクス、商社などを担当。『金融ビジネス』編集長、『週刊東洋経済』副編集長を経て、2001年論説委員長。2009年退社し現在に至る。著書に『カリスマたちは上機嫌――日本を変える13人の起業家』(東洋経済新報社、2001年)、『失敗するから人生だ。』(東洋経済新報社、2013年)。

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